2016年11月1日火曜日

塩谷靖子(声楽家)           ・遅咲きの歌人生

塩谷靖子(声楽家)           ・遅咲きの歌人生
1943年 東京生まれ 1951年疎開先の鳥取県境港市から東京に戻り、東京教育大学付属盲学校の小学部に入学しました。
先天性緑内障を患っていましたが、この頃完全に失明しました。
中学部、高等学部を経て1967年東京女子大学文理学部数理学科に入学、卒業後はコンピューターのプログラム開発会社に就職、点字交換用ソフトを開発し、コンピューターからのデータを点字で打ち出すことに初めて成功しました。
塩谷さんは幼いころから歌を歌うことが好きでしたが、42歳の時にたまたま人前で歌っていたのを聞いたピアノの先生に進められ声楽の勉強を始めました。
6~7年経ったころからコンクールに出場するようになり、入賞入選を果たしました。
特に1995年から3年連続で奏楽堂 日本歌曲コンクールに入選し、実力を発揮しました。
現在もクラシックから愛唱歌まで幅広いレパートリーで演奏活動を行っています。

最近では点字歩みの会が有りまして、そこの50周年記念パーティーが有りそこで歌わせてもらいました。
亡くなった主人が創立者という事になっています。(塩谷治さん)
11月23日 勤労感謝の日に「行く秋に」というタイトルで日本の秋の歌を歌います。
12月17日 「木枯らしの歌が聞こえる」というタイトルで10数曲を歌わせてもらいます。
トークも取り入れてやりますが、こちらが面白いことを言うと直ぐ反応します。
クラシックは基本的にはマイクを使いません。
高校のころからシューマン、シューベルトのレコードを聞いたり、自分でも歌ったりしていました。
マッサージ、鍼の職業コースに行きました。
紆余曲折あって、中年になって声楽を始めると言うことはなかったのであきらめていましたが、サロンで歌ったり弾いたりする集まりが有り、そこで音大の先生がいて、歌を始めたらどうかという事になり、歌を始めることになりました。
本格的に歌の勉強を始めました。

段々マンネリ化して、そんなことが7~8年続きました。
51歳の時に全日本ソリストコンテストを受けてみないかと言われて、入賞して、そこで初めて本格的なホールで歌えたと言う実感を持ちました。(1994年)
奏楽堂 日本歌曲コンクールが日本歌曲では一番有名ですが、年齢制限が無くて、それを受けて最初から2次予選に行って1995年に本選に行きました。
それから3年連続で入賞しました。
本選まで行く人は芸大出身者が多かったです。
本選にいくとは思ってもみなかったので吃驚しました。
花をテーマにして曲を選んだ覚えが有ります。
一次予選では結構年配のかたもいますが、二次予選、本選になると明らかに私が最年長で目立っていました。
周りでも影響されて、歳をとっても絵を本格的に始めて入選したとか、栄養士の資格を取った人とかいました。

2009年刊行 エッセー集 
音楽の先生から点字楽譜を教えてもらい、ラッキーでした。(先生も殆ど点字楽譜を知らない時代)
先生からNHKのコンクールに出るように言われて3回出ました。
1954年宮城道雄さんの伴奏で歌う機会があったが、童謡を歌ってくれる小学生を探していて、点字楽譜を直ぐにもらえて、直ぐ歌う事になりました。
中学部では国語の先生の影響を受けました、文芸書を楽しく読む事を教えてくれました。
文学書を読むと言う習慣も出来ました。
高等部は普通科に行き、その後職業科に行きました。
その後、東京女子大学の数理学科に行きました。
東京にある色々な大学にも点訳サークルが出来て、大学生の教科書を点訳する会が出来ました。
その時に早稲田の点訳会にはいっていた塩谷治さんと出会いました。
塩谷治さんは普通高校の先生になってその後、自分の希望で盲学校の先生になりました。

点字は200年前にフランスのルイ・ブライユによって考案されました。
縦3行、横2行の点が有り、6個の点を場所のどこに点を置くかという事で64通りあります。
アルファベット、数字、楽譜、化学式、数学記号をどうやって表わすかは、ちょっとした仕掛けで色んな文字になります。
点字の本はかさばるのでパソコンの中にデータとして入っています。
昔とは様変わりしています。
物を書く事が好きだと発見したのは最近のことです。
自分が書いたものを一般の人に読んでもらったり、一般の人たちが書いたものを、音声に変換したり、点字ディスプレイに変換して読めるようになったので、書くと言う事の原動力になったと思います。
夫は2年前に亡くなりました。
与謝 蕪村が大好きです。切なさ、影の有る句が好きです。
「白梅(しらうめ)に明くる夜(よ)ばかりとなりにけり」
「橋なくて日暮(れ)んとする春の水」
「 これきりに 径 ( こみち ) 尽きたり 芹 ( せり ) の中」