2023年6月30日金曜日

土屋順紀(染織家)           ・草木染めで織り成す紋紗(もんしゃ)の美

 土屋順紀(染織家)           ・草木染めで織り成す紋紗(もんしゃ)の美

土屋さん(69歳)は紋紗(もんしゃ)の技術で国の無形文化財(人間国宝)保持者に認定されています。  土屋さんは昭和29年岐阜県関市の生まれです。  高校を卒業した後、京都の美術専門学校で学んでいた時に、草木染の紬染めで知られていた志村ふくみさんに出会い、卒業後に弟子入りしました。   その後故郷岐阜県関市に工房を構えた土屋さんは、研修で「羅と経錦」の技術で国の無形重要文化財に認定されていた北村武資さんから紋紗の織り方を習います。  自分が表現したいものが紋紗で表現出来ると確信した土屋さんは、植物で染めた糸を使って紋紗作りに打ち込みます。  それからおよそ30年、透け感のある色鮮やかな紋紗を織り続けて居る土屋さんにお話を伺いました。

透けているところと透けていないところで文様がしっかりと全体に表現されて居たり、反物を持ち上げてみると透かして見える薄くて軽いものですね。  紋紗は夏の着物です。  紋紗以外にもであるとか 羅であるとか、そういった織物があります。   織物には四大組織があります。  平織、綾織、朱子織、捩り織です。  平織、綾織、朱子織までは最初から糸が真っすぐなんです。  捩り織は捩る、交差するという事です。      透けているところと透けていないところですが、透けているところが紗織(捩り織)です。   隣同士の糸が絡んで交差して、そこに横糸が入ります。  そこに空間が出来ますが、これが透ける一つの要因です。   平織はきちっと縦横が交りますから、透けませんが、その両方が文様が出来るように織り込んだものが紋紗(もんしゃ)です。

本来の紋紗は、平安貴族の公家とかの家の紋が大きく散らばっているようなものだったらしいです。  私の場合は幾何学模様のような紋しか織れませんが。 かすり文様で色を付けています。  「かすり」は元々東南アジアあたりから日本にもたらされて、日本では沖縄、久留米かすり、山陰のかすりとか全国に広がります。  糸自体をくくって染めるところと染めないところをまず作って、縦、横、両方使ったりしながら織り込んでいくのが「かすり」です。  ですから「かすり」と織の中間みたいに考えてもらえればいいと思います。   「かすり」は元々は庶民のものです。  私の場合は染め際のところを何段階かのグラデーションを付けて「ぼかし」を入れています。    庶民と貴族が合わさったような感覚です。   自分の気持ちのまま作っていたらこうなったので、これは後で気が付いたことです。  

高校2年の時に歌舞伎にのめり込んでしまって、着物が自分にとっては普通なんです。   着物にどんどん興味が湧いてきました。  京都インターナショナル芸術専門学校テキスタイル科にいって、そこでの出会いが自分の道になって行きました。   高校2年の時に植物染料の勉強をしていた時に、志村ふくみ先生のところに見学に行きました。  染めてあった糸を見た時に私が染めていたものとは全く違って驚きました。  卒業と同時に弟子入りしました。   先生の美に対する思い、が凄かったです。  グラデーションで気に入らなかったからやり直そうとしたら、それでいいというんです。   そこに凹凸がはいったり違う色が入ったりしても、全体を含めて観た時の美しさがあるものなので、という事で勉強させてもらいました。   

10年後ぐらいに北村先生に学びました。  北村先生はきちっとした織りなんです。   「羅と経錦」の技術で国の無形重要文化財に認定されています。  次世代に技術を伝えようという事で研修会があり、8名参加しました。  「紋羅」というとっても難しいものでした。  いろんな織り方をマスターしないと織れないんです。  20~30 種類の織り方を勉強しました。   それが後々まで勉強になりました。   その中に紋紗がありました。  故郷に帰って、涼しげな夏物が自分にはふさわしいのではないかと思いました。    平織の「すずし」を織っていましたが、紋紗を織るようになりました。   織る道具も厳しく会得していきました。    

植物染色はどのぐらいの量を取って来て、どういう煮出し方をするか、染める時も一瞬で染めるか、何分も入れておくか、一晩中入れとくかで色は変わって来ます。  その人の色が出てきます。  自分の家の周りのものを主にしたいと思っています。   鮮やかな赤、藍、紫とかは周りにはない色なんです。   家の周りのものとしては、「葛(くず)」、 [背高泡立草] ·、川辺の土手にはいろいろあるのでそれを採って来ます。     新しい植物との出会いもあります。(外来種)   「くさみ」といって秋に川沿いに生えていて、小さな青い実がつきます。  たくさん採って来て染めるとみず色に染まります。 その薄い空色が貴重なんです。 感動しました。   

準備段階からすると半年掛かります。   織るという事は2か月ぐらいかかります。   計画して糸を染めて、縦糸を巻いた状態にして、機に載せます。(機ごしらえ)      朝一番は手が動くが、疲れてくると休憩します。   色とかがらのアイディアは、作成中にいろんなイメージが湧いて来るので、デザイン帖に書いておきます。 そのためには感性を磨くことが重要です。  芝居、美術館巡り、お寺巡りなどを頻繁にやっています。   

日本の着物、帯は私は日本の文化だと思っています。  ファッションでありアートであると思っています。  着るという事だけではなく、もっと自由に楽しんでいただければと思っています。  日本伝統工芸展が今年70周年を記念して行われます。 9月13日から始まります。