2020年11月14日土曜日

鵜飼秀徳(僧侶、ジャーナリスト)    ・「お寺が減っていく」

 鵜飼秀徳(僧侶、ジャーナリスト)    ・「お寺が減っていく」

鵜飼さんは5年前、経済誌の記者として全国の集落を回り、檀家の減少と住職の高齢化、後継者不足で存続の危機にある寺の実情を取材、著書「寺院消滅」として発表し、反響を呼びました。   2年前に独立して実家である京都に戻り副住職を務めながら、ジャーナリストとして現代社会と仏教をテーマに取材と発信を続けています。  全国にはおよそ7万7千の寺がありますが、このまま地方から大都市への人口流出が続けば、20年後の2040年には地方にある2万7千もの寺が無くなるという予測があり、鵜飼さんは寺の存在価値が見直されるよう一般社団法人「良いお寺研究会」を立ち上げ様々な活動を続けています。  寺が直面している現状と課題について伺いました。

京都の嵯峨野にある正覚寺という小さな浄土宗のお寺の次男として生まれました。  

大学卒業後記者として新聞社に入り、雑誌社に移り経済の記事を書いていました。

マクロ経済、災害と日本等幅広い範囲を取材して、その一環としてお寺の減少を通して、日本の人口減少社会を見れないかという事で取材を始めました。  大学時代にお寺の修業に行って、友人の大きな寺でも食べていけないというような事で後継者がいないためどんどお寺が減ってきている、と言っていました。  私のお寺では檀家の数が100~120軒で食べてゆくには足りなくて、300軒ぐらいほしいところです。

元総務大臣の増田寛也さんが日本創生会議を立ち上げて、「地方消滅」という衝撃的なレポートを出されました。  人が地方からいなくなればお寺も当然消えてしまいます。   檀家制度があり江戸時代には必ず一つの村に一つのお寺を作って、9万のお寺があったといわれます。  村人は全員その檀家になって、それが引き継がれてきています。

100軒を切ったらお寺の維持が難しくなる。  人口流出が続けば、20年後の2040年には地方にある2万7千もの寺が無くなるという予測が導き出されてきます。

50%の自治体(村、町、市)がなくなって行き、そこにあるお寺も無くなって行く。    宗勢調査、全国のお寺にアンケートを取って後継者がいるかなどを問いかけると、はるかに厳しい数字が出ていて、下手をすると5万を切ってしまう可能性は十分あると思います。

長崎の五島列島の奥島では鯨捕漁のところでは、商業捕鯨から調査捕鯨になり、漁師が貧しくなってお寺に寄付ができなくなり、お寺が消えてゆく、というように第一次産業の衰退とお寺の衰退がリンクしてゆくケースがあります。

福島県会津地方は日本でも屈指の空き寺が多い町です。  会津坂下町、兼務寺院(無人化したお寺は地域の有力なお寺が兼務してゆくという制度がある)が、一つのお寺につき最多で14のお寺を兼務しているケースが会津坂下町であります。  自分のお寺だけでも大変なのにそれは結局無理です。

檀家が増えたにしても維持管理費もかかってしまう。  空き寺になるとお寺に盗難があり、仏像が盗まれて海外のオークションで売られていくのが日本全国で相次いでいます。

お葬式の簡素化が追い打ちをかけているところがあります。  家族葬、直葬(お葬式そのものをしない 東京では急激に増えている)が増えている。 

東京における家族葬と直葬の割合は80%を超えているといわれます。

樹木葬、海洋散骨、小さなお墓、永代供養のビル型など、いろんな種類が増えてきている。直葬にしてしまうとお寺さんとの付き合いはなくなる、セレモニーがなくなってしまうので。   その後の法要もしなくなる。(四十九日、百か日、一周忌とか)   お寺のつきあいで経済が成立していた面があるが、つきあいが無くなり付き合いのその構図が崩れてきている。

ある教団では300万円以下という割合が60%を越えているところもあります。    大方のお寺は食べてゆくにもつらい状況です。  

3月のお彼岸、4月の花祭り、5月のゴールデンウイーク(故郷に戻ってきて法事を行う)、8月のお盆、9月のお彼岸など、コロナ禍のため行事の中止などがあり首都圏地域のお寺は相当厳しかった。 

曹洞宗(日本最大の宗派)がコロナの影響の調査票ではお葬式の通常通りが20%、縮小してやるが75%、やりませんでしたが1%という結果がありました。

法事では通常通りが20%、縮小が34%、法事をしなかったが45%になりました。

寺院収入、例年同時期と比べて減少が80%、減少率も3割以上減少が48%、5割以上減少が23%、9割以上減少が2%になっています。

政府からの給付金は政教分離から宗教法人では出ません。

コロナ禍が長引くとダメージが心配です。 海洋散骨でいいんじゃないかなという風な動きになっていってしまう方向とか、法事もいいのではないかとか、そういった心配もあります。

オンラインでいいのでは、お経もユーチューブでいいんじゃないかとか、そういうふう風潮になってしまうとどうなるのかなという心配はあります。  人がお寺に行かなくなるという心配があります。

2018年「良いお寺研究会」を立ち上げました。  お寺の消滅をどうやったら止められるのか、仏教界と企業とのマッチングする社団法人を立ち上げました。

お寺を使って社員研修(働く意味を見つめなおす、企業倫理とか)、仏教の知恵を使って、何のために働いているのかなどを見つめなおす。

障害者の絵を大徳寺のお寺に展示し、印刷会社が参加してバーチャルで展示会をする、オンラインで個展を開く。(今月から1月10日まで「可能性アートプロジェクト 2020イン大徳寺」で検索できる)

花のお寺のプロジェクトをやっていきたいと思っています。 花が人を集める力を持っている。  お花をたくさんの方が見に来ることで、お寺だけではなく地域全体が再生してきた事例もあります。

建長寺などでは寺ワークと言ってコロナで通勤できない人を対象に静かに作業できる場所を提供する。  空き寺では管理が住職ではなくていいのではないかと思っていて、企業がそこにオフィスを構えてもらって、お寺の維持と賃貸料でお寺の維持をしてもらう。  こういう仕組みも面白いのではないかと思います。   お寺に人が集まってくるような企画が多いです。  お寺は社会全体のものだと思っていて、お寺は門戸が開かれていることが大事だと思います。  お寺も公共財と言えるかもしれません。 学校、交番、病院、郵便局とかと 多分お寺は同じだと思います。 地域の中で活用されて初めてお寺の存在というものが増してゆくと思います。  弱者への寄り添いがお寺にとって大事なテーマだと思います。    企業、行政とのマッチングなどの提案をしていきたいと思っています。  「旦那」の仕組みをもう一度再構築していきたいです。  人口減少なのでどうしても檀家は増えない、お寺が低空飛行続けられるようなものを目指していきたいと思っています。