2023年12月5日火曜日

鬼頭暁史(中学校教師)         ・〔人権インタビュー〕 15歳の傷 子どもたちを性被害から守るために

鬼頭暁史(高校生の時に性被害を受けた中学校教師) ・〔人権インタビュー〕  15歳の傷 子どもたちを性被害から守るために

鬼頭さんは15歳の高校生の時、旅行中に性被害を受けました。  現在は2人の子どもを育てながら、教師として子供たちを性暴力から守るための活動をしています。 

ジャニーズ事務所をめぐる性加害の問題では、ショックを受ける部分が凄く大きかった。  心の尊厳を大きく傷つけるもので、一生残り続けるものだという事がなかなか理解しづらい部分が凄く大きいと思っています。  知識もなく教育も受けていない子供たちが被害に遭ったという事に、言葉にならない気持ちがあります。  子どもを守るという視点でもこのようなことが二度と起こらないようにしていかなければいけないと思います。

私が被害に遭ったのは高校1年生の15歳の時です。  一人で旅行して、ある民宿の主人が加害者でした。  その宿には2日間泊めてもらいました。  最初はとっても良くしてもらいました。  2日目に寝ていたらふすまの開くような気配がありました。  布団に入ってくる気配がありました。  宿の主人の男性だと判りましたが、何のために来たのか判らないまま、身体、性器などを触られました。 何もわからないまま、声を出すことも出来ないまま、どのぐらいの時間かはわからないが、長い時間に感じられました。  その後その男性は布団から出て行きました。  考えが纏まらないままその朝を迎えたという事を覚えています。  嫌悪感があるがどう考えてどう対処していいのかが、考えられないというか、自分に何が起きているのか判らないうちは、人間は本当に動けないんだなと言う事を実感しました。  宿の主人は何にもなかったように接してきました。  私自身もなかったような振る舞いをしていました。  自分が傷ついたことをされた、厭なことをされたという事は無意識に判っていたと思うので、自分のなかでなかったことにしたかったのかなあと思います。  宿賃はただでいいという事で宿を後にしました。 

当時被害に遭ったという事を認識していなくて、宿賃をただにしてもらってお礼を言ったことに対して、未だに心に残っているところです。  被害に遭ったという認識がなかったのは圧倒的に知識の不足だと思います。  男性も被害に遭うという事を全くイメージがなかった。  被害に遭ったということは誰にも話せませんでした。(どう話していいのか判らない。)   知識のない子供が拒否をしたり、異議を唱えたりするのがとっても難しいと思います。  知識があったらいろんな選択肢があったと思います。  被害に遭ってから自分が性被害と言う事を認識するまでに20年かかりました。  

当時「#MeToo(ミートゥー)」と言うのが世界で注目されて、女性の自分の性被害を告白するというのを目の当たりにして、15歳の時に起きたことと言うのも性被害だったのかもしれないと初めて気付いた様な状態でした。  自分も「#MeToo(ミートゥー)」の運動に参加したいと思いました。  SNSに被害についての文章を書き始めました。  投稿の前に妻に告白することにしました。 自然に「辛かったね。」と言う言葉を掛けてくれました。 凄く救われた部分があると思いました。  見えなかった傷がどこの傷でどんな傷なのかが判るというのは、凄く大きな変化で、社会の問題なんだという意識が強くなりました。 

ジャニーズの問題が注目された時には、語られてこなかった男性の性被害と言うものが社会に広く認識されるようになるだろうし、男性は性被害には合わないという偏見が変わってゆくんじゃないかと言う期待を持った部分があります。 NHKの番組で実名で顔を出して、告白したことがありますが、多くはないが、SNSとかで私の被害を軽視するような発言、揶揄するような発言を送ってきたりしました。  覚悟してメディアに出たつもりですが、これほど深く胸に刺さるものなのかと、改めてそこに気付いた部分があります。  

社会の意識を変えてゆく為には、矢張り教育だと思います。  性教育に継続的に取り組んでいる学校は現状では少ない。  教育現場でも自分の性被害のことを話したことがありますが、真剣に聞いてくれたと思っています。  相談をしてくれる子が増えたなと思います。 「話してくてありがとう。」とまず言います。 話しやすい環境を作って行きたい。 SNSでも積極的に発信するようにしてます。 教育界の勉強会にも参加しています。   日本では性教育が物凄く遅れている。  大人こそ学んだり行動することが必要ではないかと思います。  包括的性教育が日本でも広がってゆくべきだと思います。 人権教育、子供たちの権利を守ってゆくためにはどんなことが必要なのか、そのためにはどんな知識や態度を身に付けさせていけばいいのか、深くかかわっているのが包括的性教育だと思っています。 被害を言葉にしてゆくのが大事だと思います。 誰にも相談できずに苦しんでいる被害者の人が多くいると思います。  自分は一人ではないんだという事を、是非伝えたいと思います。