山本むつみ(脚本家) ・時代劇と女性たち
山本むつみさんは北海道旭川市の生まれ。 北海道大学卒業後、出版社に勤めながら脚本の勉強をし、NHKのラジオドラマ脚本懸賞で最優秀賞を受賞したのをきっかけに、2004年『御宿かわせみ』でテレビドラマの脚本家デビュー。 以来NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』NHK大河ドラマ『八重の桜』、現在放送中の『あきない世傳 金と銀』など多くの脚本を手掛けています。 時代劇は日本が世界に誇れるコンテンツと言う山本睦さんに伺いました。
子供の頃は時代劇が大好きでした。 父が歴史や時代劇が大好きでした。 当時は毎日テレビで時代劇をやっていました。 昔の方が一杯種類がありました。 青春もの、恋愛ものホラーっぽいものなどいろいろのジャンルがありました。 司馬遼太郎さんの「燃えよ剣」など印象があります。 北海道大学では剣道部に入りました。 卒業後は出版業界にに入りました。 中学ごろから短編小説を書いたりしていました。 脚本家になることは全然考えていませんでした。 図書館では脚本をたくさん読んでいました。 時代小説を書こうと思ってシナリオ・センター「シナリオ作家養成講座」を受けました。
2001年ラジオドラマに応募して『川留め騒動始末』の脚本がBKラジオドラマ脚本賞佳作に選ばれました。 2002年、四国放送公募の入選作『阿波藍の唄が聴こえる』が開局50周年記念ラジオドラマとして放送された。 2003年、第31回NHK創作ラジオドラマ脚本懸賞に『唐木屋一件のこと』で応募し、最優秀賞を受賞。 2004年、『御宿かわせみ』でテレビドラマの脚本家デビュー。 その後も編集者と脚本家を兼業していました。 2006年に出版社を辞めました。 2010年前期のNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の脚本を担当しました。 出版社にいたので水木しげるの事は理解できました。 自分の家族のことも織り込みことが出来ましたので、良い題材だったと思います。
2013年には、NHK大河ドラマ『八重の桜』の脚本を担当しました。 東日本大震災の復興、地元の人たちを力づけようという思いもあり、計画されました。 私自身余り八重さんの事は知りませんでした。 調べ始めたら凄く引き込まれて行きました。 大河ドラマとして世の中に伝えなくてはいけないと思いました。 私は鉄砲で戦いたいといった唯一の女性なわけです。 女性には「かせ(制約)」があり、ドラマを面白くするのは「かせ」です。 「かせ」から葛藤が生まれて、ドラマと言うものは葛藤を描くものですよと、教わりました。時代の「かせ」、女性としての「かせ」があり、ドラマは乗り越えなければいけない困難があり、葛藤があり、それを乗り越えることにより面白くなって行く。
八重さんの資料が乏しくて、苦労しました。 幕末の資料を段ボール何箱分も読みました。 書いているうちに私の知らなかった新事実も出てきたりしました。 現代人の視点で当時を断罪?するような形のものではいけないと思います。 暮らしのところまで踏み込まないとリアルなシーンは描けない。
「あきない世傳 金と銀」 江戸中期、兄と父を亡くし大坂天満の呉服商に奉公に出た学者の娘・幸(さち)が商才を発揮し商人へと成長する物語。 原作がとても面白い作品です。 こちらも様々な「かせ」があるわけです。 時代劇ですが、テンポよくしていきたかった。
日本では時代劇は高齢の人しか見ないと言う様な雰囲気があるのは残念だと思います。 当時の日本の素晴らしい文化をリアルに再現していて、当時の生きて行った女性、商いの姿を描いています。 時代劇は日本が世界に誇れるコンテンツだと思います。
「新しいことを始めるとすれば必ず邪魔をする人がいる。 蹴散らして前へ進め。」と言う気持ちがないと、突破していけない。 これはやるべきだと思ったら、突破して貫いてゆくという事を、自分が書いていることから学びました。