2026年3月19日木曜日

鈴木堅之(足こぎ車いす製造・販売会社代表) ・「“自分らしさ”をあきらめない」

鈴木堅之(足こぎ車いす製造・販売会社代表) ・「“自分らしさ”をあきらめない」

 車椅子に自転車のようにペダルが付いています。 足こぎ車椅子、30年以上前に東北大学の医学部と工学部が、病気や障害により歩くことが困難となった人でも、人間に備わるある機能を使えば自由に移動できる、そんな研究を進めていました。  その研究に共感し、足こぎ車椅子の実用化を進めてきたのが、元小学校教師の鈴木堅之さん。 自分らしさをあきらめないと言う開発者の思いを受け継ぎ、活動を続ける鈴木さんに伺いました。

東北大学医学部の半田康延先生と言う方と、工学部が連携して開発したペダルのついた車椅子と言う変わった車椅子です。 ペダルからタイヤのほうにチェインが伸びていて、駆動が伝わって動き出します。 手元にハンドルがあって引っ張ったり押すことによって方向が変わるようになっています。 足が動かないと思われていた方たちが、自分の足を使って再び自分の体を動かす可能性があると言う、そういった車椅子になります。 脳梗塞の方、パーキンソン症の方たちとかが使っていただいています。 

自分の体が動かせるかもしれないと感じた途端、心が向きになって今まで閉じこもっていたところから1歩出れると言う、そこが足こぎ車椅子の特徴かもしれません。 内科的疾患でも外科的疾患でも、足が思うように動かなくなると言う症状がありますが、そういった方たちでも足こぎ車椅子に乗った場合、不思議と1歩踏み込めて、自分の足が動けるぞ、と体験していただけるわけです。 ある小児癌のお子さんがいました。 自分に自由に動けない状態でした。 そのお子さんに足こぎ車椅子を乗っていただきました。 乗った瞬間すっと動けるんです。 兄弟仲良く楽しそうに遊んでいる姿を見て、お母さんが喜んでました。  そのお子さんは亡くなってしまいましたけれども、最後の瞬間まで楽しんでいる様子をお母さんは見て、悩んでいるお母さんには、是非知ってほしいということで広めてくださっています。

人間の本能は、原始的な歩行反射を持っていて、人間が持っている本能です。   足こぎ車椅子はその原始的な歩行反射を、出しやすい角度と姿勢を作っている原始歩行を導き出す装置なんです。 麻痺しているはずの足からも自ら筋肉を動かすと言う波形ができて出ています。 足こぎ車椅子で最初に現れるのが、左右のバランスが整ってくると言うことです。 足は第二の心臓と言われる位、全身に血液を送るわけです。 脳も正常な人と同じようなレベルまで血流を上げることができます。医療機関ではリハビリとか緩和ケア病棟、認知症の方たち向けにも使われています。

足こぎ車椅子を偶然テレビで見ました。 小学校の教師をしていましたが、その足こぎ車椅子を使ってもらいたい子がいました。  私は足こぎ車椅子を世の中に出したいと言う思いだけで、先生のベンチャー企業設立に参加しました。  私は営業を担当しました。 最初はほとんど断られてしまいました。 ベンチャー企業は倒産してしまいました。 欠点がいろいろあったので、半田先生とともにさらに改良を進めることになりました。 足こぎ車椅子を作ることの企業を立ちあげしました。(2008年) 重さ80キロ、価格300万円でしたが、それを軽くて価格の安いものを作ろうと思っていました。

最後にたどり着いたのは、テニスの国枝選手が使っている車椅子を作る会社でした。 図面を書いて、実際にものが出来上がって、大学のリハビリ室まで持ってきてもらえました。 軽くて片手でモテてデザインもかっこよかったです。 その企業の社長は漕げるわけはないだろうと、大学の研究なんて世の中にの役に立たないんだよっていうのを言いたかったらしいです。 でも感動しました。本気にさせることができました。 

動かすことによって本人が喜び、スタッフも喜ぶ、それを見たご家族の方も喜ぶ 今まで負担だった大人が精神的にも身体的にも24時間介護するんだと頑張っていたご家族の方もほっとするわけです。 そんな中、東日本大震災が発生しました。  会社が東北大学の中にありましたけれども、半壊状態になってしまいました。  足こぎ車椅子を世の中に出すと言うのは難しいかなぁと感じました。 実用化して2年の時でした。 避難所では、ご高齢の方の体が動かなくなってくる、もともと動きがなかった方はさらに動けなくなる。 そういう現象がたくさん起きてきました。 足こぎ車椅子を使っていただければそうならないんじゃないかなぁと思いました。避難所をいろいろ回りました。 

足こぎ車椅子は生活の中に溶け込んで、さらにまた周りの方たちにも何か変化を起こしていく不思議なものだなぁと感じていました。 能登半島大地震の時にも足こぎ車椅子を使っている方がいらっしゃいました。半田康延先生は2023年に77歳で他界されました。 半田先生は後半は自分が足こぎ車椅子のユーザでした。    ご自身が生活の中で足こぎ車椅子を使っていました。 リハビリの中に限らず、生活の中で使う、それこそがそのまま身体の機能を維持したり、向上したりすることにつながると先生はおっしゃっていました。 買い物、旅行、リハビリ、それぞれのところで、足こぎ車椅子はちゃんと使える、それを半田先生自身が見せてくださいました。 SNSで取り上げてくれるようになりました。