2025年12月5日金曜日

棚原喜美枝(一般社団法人ある代表理事)   ・生きていればOK 沖縄・“ケアリーバー”支援者

棚原喜美枝(一般社団法人ある代表理事)   ・〔人権インタビュー〕生きていればOK 沖縄・“ケアリーバー”支援者 

沖縄では子供の貧困が大きな問題になっています。 とりわけ児童養護施設や里親家庭などから離れた子供はケアーから離れた人、いわゆるケアーリーバーと言われています。 そうした子供や若者はその後の生活の中で、困難を抱えることが多く中に命の危機にある人もいるなど、どう支えていくか課題になっています。 今回はそんなケアーリーバーの若者たちの相談室、「虹のしずく」をつくり包括的な支援を先進的に担う棚原喜美枝さんに伺いました。

ケアーリーバーと言うのは、児童養護施設や里親家庭でケア―を受けていた子供たちが、そこを離れるという意味でケアーリーバーと言われています。 18歳で高校を卒業すると措置解除と言って、社会的養護の解除になります。 措置延長制度もかなり充実してきました。 まだ居たいという事になれば、年齢を区切らないことになっています。 「虹のしずく」は2019年から開所していて、相談台帳上は400人の子供たちの登録があります。  27,8歳の子もいます。  18歳になるとうちに繋がって、子供たちと毎月120件ぐらいラインで連絡したり電話したりして毎月関わっています。  一番多いのはラインでの相談です。 女性が6割を占めています。 若年で妊娠出産された方が多いです。 私たちが行ってお話を聞くこともあります。 

出前講座の「命の教室」で性教育もしています。  若年妊産婦の支援をしています。  経済的な問題はダイレクトで切実です。  非虐待児の入所は6割に達していると思います。  パートナーからのDVもありますが、自分が不利益だと判っていても切れないという事を言います。   負の連鎖になってしまう。  自分の傷つきの部分をきちんとケアーできていないから、同じようなサイクル、人間関係のサイクルに入ってゆく。 トラウマケアーが必要なんだと思います。  昨年からトラウマ治療を始めました。  本人が子供時代に受けた逆境体験を引きずっていて、その傷を癒さない事には先に進めないという事が判りました。    精神科に通院している子が多いんです。  400人のうち40人程度が通院しています。  通院同行が20人います。  

トラウマの原因は、子供のころに適切に扱われなかったので、母親が泣くのは自分がいい子にしていなかったからだとか、何かしら自分を自虐的に見てる、自分はいいよとさがってしまう、被害体験があると似た様なシチュエーションの場に行けなかったり、一人で行動できなかったり、パニック発作が起きてしまったりする。 無力な自分しか自覚できていないから、そういう場面に出くわさなようにしようとすると、外に出られないとかあります。   多くは性の被害が多かったです。 他には近親者(親とか)からの暴力。 

トラウマ治療はTF-CBT(Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy 米国で開発された子どもを対象とした治療プログラムです。1990年代に性的虐待を受けた子どもの治療に試行されたのを皮切りに、養育者の治療参加、子どもの発達的要素への着目など、修正と改良が加えられながら発展してきました。)トラウマフォーカスト認知行動療法を取り入れてやっています。 約1年ぐらいかかります。  自分が悪かったのではないんだという事がはっきりしてきます。   辛い箱を開ける前にリラックスゼーションを行います。  当時の記憶に戻って再挑戦して、違う自分を作って行って、あれは過去に起きた事だったと自分に中で整理をつけると、同じ穴に落ちない。  

途中でリタイアする子もいます。 誰にでもできる事ではないです。 トラウマが邪魔をして自分に有益なことを選択しないことがある。 それを除くことによって選択肢が変って行って、出会う人たちが変ってくる。 自分の環境が明らかに変わってくる。  

私が施設にいる頃、15歳で卒業して高校生になれない子が二人いて、就職しました。 施設を出て自分の生計を立てていきます。  二人は目の届かない県外に行ってしまいました。  持病があって亡くなってしまったという事がありました。 ちゃんとつながっていればそんな事は無かっただろうと思って、後悔しました。 社会が悪いと思いました。 「虹のしずく」ではシンプルに「兎に角生きていればいい。」と子供たちに言い続けています。  この仕事をしていて10代で亡くなってゆく子が他にもいるんです。  

必要なことはやるという事でやって来て気が付いたら、認可外保育園もやってしまっています。 新生児から預かります、という事をコンセプトにしています。  子育て支援を大事にしています。 出産後1か月に赤ちゃんを特に大事にすると、母子の愛着を育み易くなります。 生後半年の時期は手厚くやってもらいます。  自分の子育てを通して、自分の育ち直し、育て直しをするというのが、今効果的に働いているのかなあと思います。 自分の子供時代を、自分の子供を通して、親の立場を比較できる。 自分の親と、親になった自分を比較できる。  辛い経験があるからこそ,人の痛みが判るので、自分の周りにいる子たちを底上げする力が彼らにはあると思うので、それを伸びやかにやって欲しい。