2025年1月30日木曜日

堀ちえみ(歌手・タレント)        ・歌うために 私は負けない ~舌がん闘病記~

堀ちえみ(歌手・タレント)        ・歌うために 私は負けない ~舌がん闘病記~ 

堀ちえみさんは1967年大阪府堺市出身の57歳。 第6回ホリプロタレントスカウトキャラバンで芸能界入りして、1982年潮風の少女/メルシ・ボク』でデビューしました。 1983年のテレビドラマ「スチュワーデス物語」で注目を集め、アイドルとして歌とドラマで活躍してきました。 2019年の1月に舌のがんを宣告され、舌全体の6割以上と左首のリンパ節を切除して、舌に太ももの組織を移植しました。 その後食道がんも見つかりましたが、そちらは早期発見の為に事なきを得ました。 舌がんからの復活の道のりは長く厳しいものでありながら、懸命なリハビリの結果みごと復活を遂げ。2023年にはデビュー40周年コンサートを行い、多くのファンの前で歌声を披露しました。 ご主人や7人のお子さん、その他周囲の人たちに支えられてがんを克服した堀ちえみさんに、歌手復活までの道のりやその思いを伺いました。

*「君といる世界」 作詞:堀ちえみ、作曲:杉真理  歌:堀ちえみ

昨年の4月に収録をし直しました。 昔とは違う歌唱法で歌わなくてはいけない状況になって、でも違う味を出せばかなと思って歌いました。  よくここまで来られたなあと自分でも思います。 明日もないかなと言う経験もして、子供達、家族のこと、歌のことが何とも言えないものが押し寄せてきて、命が存続できたあかつきには歌を歌いたいと思たのですが、命は助かったがしゃべる事すら容易ではありませんでした。 病気とまず戦って乗り越えられたら、これを糧にして素晴らしい人生に変えていくチャンスかなと思いました。

34歳の時は特発性重症急性膵炎、48歳の時が特発性大腿骨頭壊死症、2016年ごろからはリュウマチもありました。 リュウマチは今でもあって薬で調整しています。 病気には戦う病気と寄り添って付き合っていく病気があります。  舌がんは51歳、2019年1月に判りました。  ステージ4になっていて、痛みが凄くて戦わずして死をまとうと言う様な状況でした。 手術では5年の生存率は高いという事で、娘(16歳)からはもう一回頑張ってほしいと言われました。 自分だけの命ではないんだなと思いました。  リンパ節への転移があって、11時間に及ぶ手術でした。  舌の6割以上をカットして、太ももから組織を40cmぐらい切って形成して、無くなった舌の部分にあてがうようにして舌の代わりとして作っていただきました。  血管は繋がっていますが、筋肉とか神経は繋がっていません。 脳から指令が行ってもその部分は動きません。 残った部分で動かしているような感じです。

今迄しゃべれていたが出来ないもどかしさがありました。 今迄とは違う発声法と舌が上手く動かない部分、歯とか歯茎、頬の内側、唇などが補ってくれて音を出すようにしてきました。  母音は大丈夫ですが、子音があると結構大変です。 気圧、温度、季節、体温、自分のメンタルな部分なのか、いろんなことを自分なりに研究、実験してみましたが、判りませんでした。 冷やしたりすると血行が悪くなって良くないことは判りました。 夏の方が声を出しやすいです。 やればやるほど良くなってゆく事は判りました。 人生やることがあるという事は幸せなことだと思います。 家族がプラス思考という事はとっても大事です。  主人は超プラス思考です。 前向きな言葉で家族を明るく持って行かないとどうしようもなかったと後で言っていました。 「人生の悩みをシンプルにする50の言葉」という本を主人と一緒に出しました。 告知を受けた直後はプラスに持ってゆこうなんて思えない、不安しかない。 でも諦めないという事は大事だと思います。 

40周年記念コンサートに向けては、本当に出来るのかなとは思いました。 やると決めたらやろうと主人から言われました。 日程を決めて自分を追い込んでいきました。 しゃべるのと歌うのでは違います。 言葉がたどたどしいと、リズムに乗れない。 新しい発見があり、リズムに乗った方が話をしやすいという事でした。 メトロノームを使ってしゃべり出したら体も動いてきて、言葉も早くしゃべれるようになりました。 歌を歌う事によって得たプラスな事です。 コンサートで26曲歌いましたが、最後の方になってゆくほど調子が良くなっていきました。 

2023年デビュー40周年記念コンサートを迎えました。  泣かないようにしようと思いました。 「お帰り。」なんて言われたら大号泣になってしまいました。 「生きていてくれてありがとう、」という言葉がとっても嬉しかったです。 10分でも時間が惜しいし、10分あればいろんなことが出来ます。  年齢を重ねることはマイナスという風に思うかも入れませんが、今年も無事に誕生日を無事に迎えることが出来たという事は有難い事です。 すべてのことが有難いと感じるようになりました。 いい贈り物を頂いたと思います。 今後、もっと歌が上手くなりたいし、ライブで全国を回りたい。 出来る限りのことをやって楽しく笑顔で歩んでいきたいと思います。  

FUWARI」 作詞:堀ちえみ / 作曲・編曲:白山タカシ 歌:堀ちえみ

医療従事者、家族、周りの人たちへの感謝の気持ちを込めて書きました。