2025年1月25日土曜日

平田満(俳優)              ・〔私の人生手帖〕

 平田満(俳優)              ・〔私の人生手帖〕

平田満さんというと1982年の映画「蒲田行進曲」のヤスを思い出される方が多いと思います。 その演技が高く評価され日本アカデミー賞最優秀男優賞などを受賞、その後も舞台、映画、テレビと活躍の場を広げて来ました。 平田満さんは1953年愛知県生まれ。  早稲田大学在学中に劇団つかこうへい事務所の旗揚げに参加、「熱海殺人事件」の刑事役など人気を集めました。  確かな演技に定評の或る平田さんですが、その原点は演出家、劇作家のつかこうへいさんとの出会いがあるといいます。 が、その後大きな戸惑いを抱えるようになります。 どの様にその日々を乗り越えて行ったのか、大切にしてきたつかさんからの人生訓などを伺います。 

「アンダーニンジャ」という映画が公開されたばかりです。 元々は漫画が原作。 高校生の学園もので、忍者もいる。 僕は高校の主事の役です。  昨年はテレビの連続テレビ小説の「つばさ」の最高裁判所の初代長官を演じました。  大学に入る前はお芝居とかとか全く関係ない生活をしていました。 大学に入って、新入生歓迎公演とやっている劇団がありました。 それを見た後打ち上げがあり参加して、その後入団することになりました。   半年もしないうちに自分には向いていないと思う様になりました。  恥ずかしいしセリフも言えない。 アングラ劇などをやっていました。  秋のつかさんの劇に参加するように誘われ芝居に出ることになりました。  即興性のある演技指導とかで、面白く感じました。  

「熱海殺人事件」では、気が付いたら毎年やっていたという感じです。 役ちゅうの人物が、表舞台、社会で注目されないような人物が多いです。 そういうのが向いていたと思います。  つかさんからは「お前がちゃんと生きていないから、芝居がつまんねえんだ。」みたいなことは言われました。 「客に媚びるな。」というも言われました。 客を意識してうけ狙い、つまり下品な芝居をするなという事で「芝居は品が良くなくてはいけない。」と言われました。 「お前の身体には哲学がねえんだ。」とも言われました。  生き方に見るべきものがないんだという事だと思いますが。  愛がないお芝居なんて観たくない、愛したり愛されたりることがない人生なんて、そこになんの喜びがあるんだろうと思っていたりします。  上手くいかなかったりすると、この作品、この本を愛してはいないんじゃないだろうかとか思ったりします。 

映画「蒲田行進曲」については幸せだったなと思います。 銀四郎を風間杜夫さん、小夏を松坂慶子さん、ヤスを僕がやりました。  これがなかったらこれまで俳優をやってこれなかったと思います。  その後テレビ、映画とかの仕事を頂く様になりました。  つかさんのころはセリフを覚えて言われたことをやれば、つかさんが作って下さって指示待ちでした。  引き出しがないので段々駄目になって40代のころになると芝居が少し面白くなくなってきました。 悩んで、事務所を辞めてフリーランスになって、仕事を捜しました。  

最近リーディングの仕事もしていますが、魅力は何でもできるという事ですかね。  舞台装置とか大掛かりになればなるほど形が決まって来ますが、リーディングは言葉しかないが、凄く遠くまで行けたり、時間も移動できるし、どんな人にもなれるし、とても自由な感じがします。  想像力が凄く搔き立てられる。  いろんなお芝居の原点を感じられます。