水戸岡鋭治(デザイナー) ・〔心に花を咲かせて〕 列車だって自然を感じ心地よく
超豪華列車7つ星を企画デザインして、その斬新さで脚光を浴びた水戸岡鋭治さんです。 他にもこれまでの列車のイメージを変えるようなデザインで注目されて、鉄道関連だけでも数々の賞を受賞しています。 列車を人を運ぶイメージからエンターテーメントに変えたという方です。 元々はイラストレーターやデザイナーで列車デザインとは無縁だったと言います。
100以上の列車のデザインを手がけました。 25歳のころ東京でイラストレーターとして仕事をしていました。 或る時ホテルをオープンするためのポスターを書いて欲しいと言われました。 ホテルの建築は進んでいましたが、ほかのことは全部やらさせて貰いました。 1987年4月、同ホテルのお披露目午餐会に参加し、偶然同席した石井幸孝JR九州社長(当時)の知遇をえました。 これを契機に、同社の列車・駅・広告のデザインに携わることとなります。 観光列車を作るというんで、プレゼンテーションをして、決まってしまいました。 列車のデザインはしたことが無かったんですが、周りからやれといわれてやりました。 タブーである白(汚れやすい)にしてプレゼンテーションをしたら、他の人は大反対でしたが、社長の石井さんだけが賛成してくれて、「この白がサービスの基本になるからね。」と言いました。
オンリーワンの観光列車を作れたらいいと思って、色は白、室内は白と黒だけ、海に向かって走るので、海に向かって椅子を置くとか、考えてJR九州が全部OKといってくれました。 それで終わりかと思ったら、次々と手掛けていきました。 内装に木を使う事も最初は予算の問題とかほかにも問題があって使えず、中途から採用するようになりました。 最先端の技術と懐かしい木を使った列車が出来てきました。 木とか、ガラス、沢山の色とか柄とか、素材をたくさん使っていく。 元々はたくさん使わないのが原則になっています。 一番大事なのは利用者が楽しいという事で、中を歩いても楽しいし、食べたり飲んだり出来たり、そういう旅を提供出来たらいいと思います。 楽しい、笑顔と笑いが生まれる車両が作りたいと思っています。
マイカーで旅をすると、車内はまちまちで会話もないが、観光列車だとテーブルがあって、話しながら旅をしてゆく事が出来る。 そういったことから最後に豪華列車のアイディアが出て来て、社長から世界一の列車を作るように言われました。 ロマンと夢があるから人を変えてゆくし、社会を変えてゆく。 予算が決まっていても、倍のスピードで仕事をしたり、8時間に自分の時間を足してゆくとコストは半額になって来る。 想いがあるとエネルギーを足して、仕事の質を上げて無駄なことを避けてゆく。 列車であるのに中に応接間が有ったり、バーカウンター、茶室、サウナ、などに加えて西陣織、柿右衛門の陶器、などがあります。 人間国宝の柿右衛門さんのところに行った時に「これは私の仕事だ。」と言いました。 予算がないと言ってもやりたいと言いました。 公共の空間に置くというのが最も大事な仕事だといって、是非列車の中に置きたいと言ってやって頂きました。 それが出来た時に亡くなるんです。 夢と言うロマンに向かって、エネルギーを出して結果として、出来てそのロマン、情熱が見る人を感動させる。
列車は狭いので、畳一畳の茶室とか、近いからリラックスして喋れるので、本音が喋れる。 狭いと言った人はいません。 茶室は1300✕1800mmしかありません。(景色を見ながらの走る茶室) 私のやっていることはデザイン職人です。 いいものは説明しなくてもしゃべって来ます。 今まで使っていないものとか、知らなかったものとかで、とてつもない新しい事とかはしてい居ないです。 小さいオンリーワンが集まってナンバーワンになってゆくんですね。
最近では北海道の「赤い星青い星」を作っています。 赤い電車4両と青い電車4両です。 世界のデザイン様式を曼荼羅のように入れたいです。(世界中の人が来るので) 手間と暇を惜しまない。 情熱がクオリティーを作る。 情熱が全てを作ってゆくんだという価値観に戻らないと、薄っぺらな時代になってゆく。 もう一回北海道の良さを知ってもらうにはローカル列車がいい。 無人駅はその村のタイムトンネルで、そこに降りると昔の歴史が判る、物語が見えてくる。 価値があるのに捨ててゆく。 電車とホームと駅は一つのもので、鉄道会社が自分で出来るところ。 地域が変わるためには、ちゃんとデザインできるのは電車とホームと駅なんですね。 駅は元々は皆が集まる公民館みたいなものだった。 駅のトイレは凄く大事に考えています。(ヒーターのある温かいトイレとか) 居心地のいい時間と空間。 楽しいと笑顔が生まれ、最終的には豊かなコミュニケーションが生まれるのが大事です。
如何に生きるはいかにデザインするかと一緒です。 今日は何をしようか、日記をつけることはデザインの行為ですから。 ようやく個人の意識のレベルのデザインが一番難しいというのがわかって来たんですね。 手間がかかるけど自分でデザインしなくてはいけない。 デザインと言う切り口で皆さんのために約に立つことが出来れば(奉仕。、ボランティアなど)可能な限りやっていきたいと思っています。 (稼ぎ仕事(米仕事)から務め仕事(花仕事)へ) 人が喜んでいる姿が一番うれしいですね。