2023年11月7日火曜日

上田 誠(慶應義塾高校野球部 前監督) ・"エンジョイ・ベイスボール"でつかんだ日本一

上田 誠(慶應義塾高校野球部 前監督)・"エンジョイ・ベイスボール"でつかんだ日本一  

今年全国の高校野球で神奈川の慶應義塾高校が大正時代の第2回大会以来となる107年振り2回目の優勝を果たしました。 サラサラの神の選手たちの笑顔に高校野球の新時代の到来を感じた方も多いのではないでしょうか。 この慶応高校の日本一を支えたのが、野球簿に伝わるエンジョイ・ベースボールの精神です。 そしてその精神と自ら考える野球をチームに根付かせてきたのが、現在の森林監督の師でもある慶応高校野球部の前の監督、上田 誠さんです。上田さんは1991年から24年間に渡って監督を務めました。 107年振りの日本一の栄光はどのようにして掴むことが出来たのか、優勝の礎を築いてきた上田さんの野球哲学とは、を伺いました。

赤松が部長で教え子で、副部長の馬場、星野も教え子です。  これらが森林監督を助けてくれて、日本一になったのは格別でした。  森林監督も教え子です。  監督が日本一になるという事を言い続けてきました。 指導者として素晴らしい才能だと思います。 それに選手が乗って最後まで明るく楽しそうにやっていたところが素晴らしいと思います。  苦しい場面も楽しめるように鍛えて準備をしてきました。   3回戦、広陵高校との対戦では接戦になりましたが、その時も変わらずやっていたので、相手がミスをしえて勝たせてもらいましたが、普段通りに出来たのが勝因だったと思います。  そこでチームが変わりました。  体力つくりとか、メンタル面でトレーナーについてもらったことなどが良かったと思います。 

上田さんは神奈川県茅ケ崎市出身、小学校から野球を始め、湘南高校、慶応義塾大学で野球部に所属、練習に明け暮れてきました。  卒業後は英語教諭となり1991年に慶応義塾高校に赴任し、野球部監督になりました。 2005年の春の選抜、2008年には春、夏の甲子園に出場するなどチームを2度ベストに導いています。 現在は神奈川県学童野球指導者セミナー代表のほか、香川の独立リーグ香川オリーブガイナーズの球団代表も務め、後進の育成に力を注いでいます。 

秋田県に教育実習に行った時に、小中学生が懐いてくれて、教師って面白いと思って、教師の道に進みました。 1991年に慶應義塾高校野球部監督に就任しました。  甲子園は諦めきっているような状況でした。  エンジョイは楽しむこと、野球も自分から考えるから面白いので、監督の言われるまま、やっていたのでは面白くない。  自由に言える雰囲気を作り出すのは大事だと思います。 言ってくるいいことは受け入れる。  1998年から1年半アメリカの大学野球の強豪UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のボランティアコーチとして留学します。 指導法を学んで持ち帰りました。  それが野球の大きな転機になりました。

ゴロを打てと僕は言われ続けてきました。 アメリカではゴロを打ってもフェンスは越えられないと言われました。  フォロースルーが大きく振りきるバッティングでした。 ストライクは審判が打てと言ってバッターに送ってるんです。 ボールはアンフェアボールと言って不正投球でピッチャに送っているんです。 そういったところが野球の歴史の始まりです。 アメリカではトーナメント方式ではなく全部リーグ戦方式です。  日本は一回負けるとすべておしまいになるので、ミスしない選手ばかり使われる感じになります。 監督と選手はいつもコミュニケーションを取っていました。  個を見て個性を伸ばそうという思想が根底にあると思います。  こういう練習をしたらいいのではないかと自分で考えます。 強豪高校は正月三が日だけ休むというような時代いで、うちだけは年末から20日間ぐらいオフがありました。  他も真似るようになっていきました。

日本ではやっていなかったジャンピングスローなども取り入れていきました。(高校野球ではありえない時代でした。)  どう考えてもファーストに早く投げれる。  自分の決めた練習を365日ずーとやると「根性」は付くと思います。 チームの中で頑張って報われたりすると、みんなで喜びを分かち合うという事があり、それがアマチュア野球だと思います。 

部訓を作りました。 20か条あります。 ①日本一になろう。日本一になりたいと思わないものは日本一にはなれない。  ②グラウンドに出たら個人の技術、精神力を高める為の最大の努力をせよ。 ③チーム全体の流れを考えてプレーせよ。 ④一人一人キャプテンだと思っているチームのみが勝つ。  ⑤自分がやって50、人をやらせて50。(バレーの松平監督の言 自分が一生懸命にやっていても周りのひとがさぼっていては,チームとして機能しない。 人もやらせないと駄目。 そうしないと100%にならない。) 

小学生の野球の指導方法は高校野球を参考にするんです。  厳しい練習をして走らせて、長い練習をして、そうしないと勝てないというのをやるんです。  野球からどんどん離れて行ってしまう。  野球人口はどんどん減っています。  小中学校の方が試してみてくれたら嬉しいと思います。  今回の優勝は良い発信だったのではないかと思います。  1990年代の後半は神奈川県では2000チームありました。  今は500ちょっとです。  少子化の3倍のスピードで減っています。  中学校の部活動が55%減とか、高校野球も2015年から全国で毎年新入部員が1万人ずつ減っています。  9回2アウトでも逆転可能な、野球のまだあきらめないという競技性が好きですね。  野球は人生のストーリー性がでてくる競技なんで、それを参考に生きてもらえたら面白いと思います。