2023年11月24日金曜日

成田奈緒子(小児科医、発達脳科学者)  ・〔ことばの贈りもの〕 早寝早起きで健やかな脳を

成田奈緒子(小児科医、発達脳科学者)・〔ことばの贈りもの〕  早寝早起きで健やか

成田さんは1963年仙台市生まれの60歳。 神戸大学医学部卒業、米国セントルイスワシントン大学医学部、独協医科大学、筑波大学にて小児科の臨床と基礎研究に従事したのち、2009年より文教大学教育学部教授です。 2014年からは発達障害、不登校、引きこもりなどさまざまな不安や悩みを抱える親子、当事者の支援事業「子育て科学アクシス」を主宰しています。

脳と少数の臓器は生まれた後もまだ作られて行って行きます。  特に脳は18年ぐらいかけてやっと一人前の状態になってゆきます。 1歳ごろになると歩き出したり、ちょっとした言葉をしゃべるようになり、3歳ごろになると駆けたり文章でしゃべるようになって、これらは脳の発達という事になります。 脳がバランスよく育つ事が大事です。 バランスを整えるために親とか周りの大人がどう言う風にかかわればいいのかと言う事を追求してゆくことが重要になります。 

父が小児科医でした。 小児科は発達が加味されるという事が非常に面白い。 小児科は身体全体の臓器に関して勉強するので、その知識が元々あって、臓器をコントロールする自律神経があり、その神経は脳によってコントロールされているので、それがうまく育つかどうかという事が子供の状態がかなり変わります。 そういったことが面白くて、1998年アメリカの留学から帰ってきたころから、シフトしていきました。  

大人たちが子供に過干渉すぎるという事が、具体的には不登校枝であったり、加熱する受験戦争とかでいろんな身体症状、心理症状を出してしまう。 自律神経失調症といったものが多くなってきています。  発達障害の可能性があると診断されるお子さんが13年で約10倍に増えた、8,8%という数字も出ています。  しかし、発達中の子どもの脳の正しい発達が損なわれてしまったことによる、見た目の発達要害になっているお子さんも一定数含まれているというのが私の見解です。 

脳幹とか、最初に原始的な脳の部分(「身体の脳」と呼んでいる)が発達しなければいけない部分です。 寝る、起きる、食べるという機能が出来るようになることが、まず「身体の脳」が育つ、と言う事を覚えていただきたいと思います。 それが5歳までに確立されると第一段階の脳が良く育ちました、という事になります。  自立神経の機能は自分で全く意識していないのに、身体をいい具合に調整してくれる神経です。(心臓、腎臓、肺とか)  この神経も生まれた瞬間にはうまく働かないので、ここをしっかり作ることも5歳迄の子どもの子育てでは大事です。  一定の環境ではなく暑い、寒いをしっかり感じさせる。  血圧を一定に保つのも自立神経なので、ずーっと座りっぱなしでゲームをしたりするのは駄目です。 野原で転がったりするのがいいのですが、今は圧倒的になくなっています。   温度、湿度が設定された環境のなかで暮らし続けると、自立神経は本当に怠けてしまいます。 自律神経失調症になって、不登校とかいろいろな問題を出してしまう可能性があります。 刺激を与えないと脳は育ちません。 

睡眠は脳の構築材料であるので、睡眠は5歳までにしっかり確立しないといけない。 昼に活動する動物は、太陽が上がると活動して太陽が沈むと寝込むというものです。 生まれたばかりの赤ちゃんは夜も3時間おきに食事を貰って寝て、昼行性ではないんです。 これを昼行性の脳に育ててゆくのが子育てです。  ぐっしり眠れるのを5歳までに作らなければいけない。  5歳では11時間睡眠が必要であると教科書に載っています。 これは地球の夜の時間です。 いまはそんな子はいないです。(9時間ぐらい) 小学生は10時間寝なさいと書いてあります。 中高生は9時間、大人は8時間寝なさいと書いてあります。 現状、だいたいマイナス2時間程度になっています。 5歳では10時間は目指してほしい(夜8時から朝6時までとか)  私はいろいろ工夫して8時には子どもと一緒に寝ることにしました。(一緒に寝ると子供は安心する) 3時には起き出して家事などをこなしました。 

「身体の脳」の刺激は5感からの刺激を繰り返し与えることが大事です。 寝ることが大事なので兎に角8時までには寝かせる。  お腹が空いて食べることも大事で、食べることで強制はしなかったです。  いろんなものをバランスよく食べる。 私は5歳まではしゃべっていませんでした。 生物が好きで地面の蟻を見て居たりして、幼稚園も登園拒否をしていました。 夢はアメリカに行って研究者になりたいという事でした。  自分と母親の関係は良くなかった。  苦しい思いをしている親御さんたちに「大丈夫だよ」って言ってあげたいと思って、それが今の活動の原点なのかもしれません。

自分が育った時代の環境と今の環境は明らかに違うので、自分が踏んできた同じ道を踏ませないと子供は幸せになれないんだという価値観は持たない方がいいと思います。     時代の風を読んで時代の風にのって、自分にとって最も必要なものを見極め力と言うものを子供に付けるという事が一番大切なキーワードになると思います。 具体的に言うと「ありがとう」と「ごめんなさい」が言えるということを、兎に角子供にいれて頂きたい。 失敗するときに、「ごめんなさい」が言えないといけない。 自分にできないことは誰かに助けてもらわないといけない。  その時には「ありがとう」と言う。 この二つが言えたら絶対生きて行けるんです。  自分のできることは誰かの助けになる。 この考え方が身に付けばうまく育ってゆくし、どんな世の中でも生きてゆけると思います。 ここが今たりないです。 困難が来ても、困難に立ち直れる力を身に付けていただきたい。