2025年2月4日火曜日

若竹千佐子(作家)            ・作家デビューから7年 今も毎日賢くなる!

若竹千佐子(作家)            ・作家デビューから7年 今も毎日賢くなる!

 若竹さんは岩手県遠野市出身。(70歳)  63歳にして小説「おらおらでひとりいぐも」で作家デビュー、2017年に文芸賞を最年長で受賞し、翌年には芥川賞も受賞、その後映画化もされました。 若竹さんは20代を臨時採用教師としてすごしたのち結婚、現在千葉県に暮らしています。  夫の死をきっかけに長年の夢だった作家を目指し、55歳で小説講座に通いました。 「おらおらでひとりいぐも」は世界で10か国を越える国々で翻訳され、ドイツでは著名な文学賞リベラトゥール賞を受賞しました。  第二作は「かっかどるどるどぅ」でフリーターや高齢女性たちの共同生活を描き、好評を得ました。 昨年秋には初のエッセー集「台所で考えた」を出版しました。  作家デビューから7年、70歳を迎えた若竹さんに、老いや一人暮らし、作品に込めた思いなどを伺いました。 

おらおらでひとりいぐも」ですが、主人公が方言で内面を語るという小説は今までなかったという事で、属性としてある登場人物を語るために方言で語ることはあっても、主人公が方言を言うのはとても珍しいという事で、印象的だったみたいです。 台所で考えた」の最初のところに最初に受賞した文芸賞受賞した言葉が有ります。 「いつかきっと小説を書くのだと子供の頃から思っていました。」と書いてありますが、本当にそうです。 目指すは青春小説とは対極の玄冬小説(老いとか)。 私自身がそういう風に生きていかなくてはいけないと思っていたので、自分を励ます小説を書こうと思っていました。

子供の頃は本は読みましたが、たくさん読んだという風ではありませんでした。 小説家がキラキラした目標でした。  そこそこ幸せではあったが、自分が学んだことを生かしてなくて、家庭で収まているという事が悔しいというい思いはありました。  その想いが63歳まで続いたと思います。  テーマが見つからなかった。 55歳ぐらいで夫が亡くなったり、考えることが一杯あって、判ったことを書くんだと思いました。 夫は急逝したのでショックでした。 想っていることなどをノートに書き記しました。 長男からのすすめをきっかけに、小説講座に通い始めました。(四十九日の翌日) 小説講座には8年通いました。 

おらおらでひとりいぐも」を書いたのは60歳過ぎてからです。 2017年、『おらおらでひとりいぐも』で第54回文藝賞を史上最年長で受賞しました。  夫が亡くなった悲しみもありましたが、自由というものもありました。 私は私の責任で何もかもやってゆくんだと思いました。  私が経験して判ったことが小説のテーマなので、探しているものがやっと見つかったという感じです。  老いは今までの経験を通して、自分が生きることはどういうことかという結果で成案を得る。  

一作目は一人で力強く生きる70代の女性、二作目は人とつながりを求める、分かち合う喜び、助け合う喜び、但し弱者です。  強い女で孤独を良しとしている人間ですが、世のなかにはそうではない人がいっぱいいる。  その人たちが孤独をどう生きるんだろう見たいな、桃子さん(主人公)は内側に向かう人間ですが、それだけではいけないなあと思っていました、後は私の個人的な体験で、100日入院したこともあり、リハビリで老人ホーム的なところもあり、そこでの生活も結構楽しく過ごせました。 皆とわいわいしているのが楽しかったです。  皆で連帯して生きてゆくというような小説を書いてみたかった。

20代を臨時採用教師としてすごし、挫折の時代でした。 非正規の人の気持ちはよくわかります。 (非正規の人が)4割とかで子供がいないというのが少なくなっているのは当たり前ですよね。 世の中は絶対おかしいなと思っています。  

台所で考えた」はエッセー集です。 エッセーを書くという事は好きじゃないです。 小説の方がやりがいがあるような気がします。  感情がこもった文体、語り物の文体が好きです。 私は若い頃は判らないことが一杯ありました。 歳を取って来ると判ることがいっぱいあります。  衰えはあるが、知性、物事の判断、洞察する力は絶対大きくなっている。  人間は経験を通して大きくなるんだと思います。