2024年5月7日火曜日

高柳和江(癒しの環境研究会理事長)    ・笑いで、病(やまい)をふっとばせ

高柳和江(小児外科医・癒しの環境研究会理事長)    ・笑いで、病(やまい)をふっとばせ 

高柳和江さんは長年笑いの医学効果の研究に取り組んでいます。 笑う事はウイルスやがん細胞と戦うキラー細胞を増やし、既存の持つ免疫力を上げることが知られています。 高柳さんは笑いが免疫力を上げることを「笑医力」と言って、免疫力を上げる副作用のない魔法の薬だと言います。 現在介護老人保健施設の施設長として、高齢者から生まれたばかりの赤ちゃんまでを見るお医者さんです。

神戸大学の医学部を出て、順天堂大学外科専攻生を経て、徳島大学医学部医学博士課程修了後、クウェートにて10年間小児外科医として勤務。  生まれたばかりの赤ちゃんを230人手術して、12歳以下のお子さんを7万人ぐらい手術しました。

クウェートと言うとおお金持ちの国なので、最新鋭の素晴らしい機械が揃っているんです。   イギリス人が来て小児外科を始めました。 イギリス方式は患者さんに皆笑うんです。 笑っていると患者さんも笑うんです。 吃驚したんですが、笑うと病気が治る子が多いんです。 入院すると病院在日数が日本で当時50日ぐらい、クウェートではたった7日間なんです。 笑うといいんだという事が判り、それは必須だと思いました。 日本に戻ってもそれを取り入れたいと思いました。 

アイオワ大学で医療管理学の研究に携わりました。 医療の質を高める事、ホッとできる場所であるとか、安全にいろんなことが出来ていることも大切で、患者満足度調査は日本ではなかったんです。  日本でも患者満足度調査を始めました。 日本医科大学に10何年いましたが、どうしたら患者さんが話したくなる医者の話し方があるかという事を勉強して、それを医学生に教えました。 今は医学部の4年生から5年生になる時には必ず全員、模擬患者の面接を受けなければいけないんです。 それから実際の患者さんに会う事が出来るというシステムになっているんです。 模擬患者さんから聞くわけです。

コロナで予防注射をするときの副作用があるがそれを減らしたいと思ったんです。  150人ぐらいの高齢者に対して笑ってもらって、ブスっと注射をするわけですが、統計を取りました。 大笑いしたグループとそうではないグループでの比較では、注射をした時の痛みも少なかったんですが、翌日に熱がでる人も少なかったんです。 統計に出ていて今論文を書いているところです。 

大きな手術をした後に療養する期間があり、患者さんに大きな名刺を渡しますが、そこには私の名前と大きな笑っている写真と「一日5回笑って、一日5回感動して。」と書いてあるんです。 笑いもそうですが、感動も本当に大切だと思っています。 古代ギリシャのアルキメデスがお風呂に入っていたんです。  水が流れ出て身体が浮き上がったんです。 これは浮力だと言って、アルキメデスの原理を発見したんです。 「見つけたぞ」と大喜びで裸のまま家まで走って帰ったというんです。  大興奮、感動です。 感動して笑う事が大切なんです。 花が咲いていて、「なんて綺麗なんだろう。」と心から感動する。 そうすると必ず笑顔になるんです。

胃とか腸の手術を単にしただけの人と、心理的な笑いを介入した人を比べると、笑った人の方が生存率が高いんです。 論文にもしましたが、データがあるんです。  実際の例で70歳ですい臓がんになった人が居て、見つかったとこには余命3か月と言われたんです。 私の笑いの講演に来ました。 幼馴染4人集まって彼女の家で朝から晩まで笑っていたそうです。 2週間でガンの腫瘍マーカーが300から激減して190になったというんです。  1年後にはガンが小さくなって、転移があって腹膜のリンパ節に有った転移が全然なくなって、2年後には何も見えなくなったそうです。 3年後には全然見えなくなって主治医が「貴方は完治です。」と言ったそうです。 私もびっくりしました。 

86才の方で心臓が悪かったんです。 歳なので手術はしないと言う選択をしました。 私のところに来ました。 時々胸が苦しくなるという事でした。 「一日5回笑って、一日5回感動して。」と言う名刺を渡しました。  3か月経って彼女は別の施設に移ることになりました。 ご家族が迎えに来て「どんな魔法を使ったんですか。」と言うんです。 「あんなにニコニコして幸せそうな母親なんて初めて見ました。」と言うんです。 皆で笑顔で帰りました。 

ガンの末期と言われた男性がいました。 ホスピスに入って覚悟を決めていました。 実は奇跡が起こりました。 ホスピスに入ってガンが治ってしまったんです。 どうしてそうなったのか判らなかったが、ホスピスから送り出されました。 大喜びで家に帰ったが、鬱になってしまいました。 その後精神病院に2年間入院してしまいました。 動かないので膝も曲がり腰も曲がりましたが、精神病も落ち着いたからという事で、家に帰るのもなんだという事でうちの施設に来ました。 例の名刺を渡しました。 3か月して彼は家に帰ることになりました。  彼は走って来て私に言いました。 「先生見てください。 こんなに元気になりました。」 「一日5回笑って、一日5回感動して、こんなに元気になりました。」と笑いながら言うんです。  感動が大事です。 

笑い、感動に加えて結局人間は感謝なんですね。 小さな花を咲かせているのを見ても「ありがとう。」という感謝ですね。 

笑い療法士を育てています。 1994年に「癒しの環境研究会」を作りました。 ソフトの部分、人間的なところがあるのではないかと思いました。 癒しを育てるのには笑い療法士が必要だと思いました。 笑いを引き出す人。 2005年から笑い療法士の育成をしています。 一番大切なのは安全安心だと思います。 安全安心を提供してくれる人、一緒にいるとホッとさせてくれる人。 心が病んでいる人には安全安心が大切です。 現在第19期生を募集しています。 

第一期生に青森県の方がいて、青森県庁に務めている人です。 青森県は自殺する人が多かったり、子供に対する虐待を何とかするために、笑い療法士となりました。 10何年活動していて、5万5000人の方が聞いていただきました。 (県の25人に1人) 7年間ぐらいで自殺する人が少なくなった。  笑い療法士の認定者は1000人を越えています。   笑いは薬になります。 リュウマチなんかにもよく効きます。 

17期生の「ダイヤ」と言うニックネームの人から連絡がありました。  97歳のお母さんを亡くされた娘さんに、私が描いた「死に方のコツ」の本を差し上げた。と言うんです。   往診の先生が、病院に行かないでうちで看取った方がいいという事で、危篤の時に「ダイヤ」が訪問看護士をしていて、娘さんが、「頑張れ頑張れ。」と言っているので、「お母さんはもう十分に頑張っているので、それよりもありがとうね、と感謝を伝えて。」といったら「お母さん、ありがとう、よく頑張ったね。」と言いました。 翌日お母さんは亡くなりました。 「ダイヤ」はそのお母さんの顔を見ましたが、見事に穏やかで美しい顔でした。娘さんが本当に看護されて、感謝しているんでしょうね、と言ったというんです。

3か月後に娘さんに電話をしたら、97歳と言うと大往生と言うが、もっともっと生きて欲しかったという事でした。 苦しい呼吸をして居たり、病院へ連れて行った方が良かったのではないかと言う思いがあったようですが、「死に方のコツ」の本(高柳和江著)を渡したそうです。 亡くなる人は呼吸は苦しいかもしれないが、本人の心は天井の方に行っているので、もう苦しくはないと書いてありました。 寄り添うという事の大切さを実感しましたと「ダイヤ」は言います。 これが実際の笑い療法士です。 笑い療法士は一般的には笑いを引き出すというんですが、心から寄り添うんです、という事をお伝えしています。  自分が心が豊かでないと、感動という事を知っていないと、感謝の大切さを判っていないと出来ないと思います。