岩崎加根子(俳優) ・〔私の人生手帖〕
1948年15歳で研究生候補となった岩崎さんは、翌年俳優座養成所第一期生となって、以後舞台を中心に映画やテレビドラマで幅広く活躍を続けてきました。 92歳の現在も劇団俳優座代表として年間100回を越える舞台公演を精力的に行っています。 昨年の秋にはシェークスピアのリア王に史上最高齢の挑戦をし、今年紀伊国屋演劇賞個人賞と読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞しました。 ライフワークとしてきた「戦争とは」のシリーズは今年夏31回目を迎えます。 強靭な精神力と体力で舞台に立ち続ける岩崎さんに、芝居にかける執念、原動力と共に「戦争とは」のシリーズの裏側に潜む記憶、想いを伺います。
「猫獅子になる」という芝居で全国を回っていて、半分ぐらい回り終わって75ステージ終わりました。 評判が良かったです。 俳優になって78年になります。 大きな賞を頂きました。 シェークスピアのリア王の日本版と言いますか、女性がリアになるわけです。 炭鉱の女性の物語です。 「芝居はいい気になってやるものではない。」と千田是也先生から教わっていました。 千田是也先生の書いた『近代俳優術』を教科書にしてきました。 立華女学園に入って戦後で中学で終わりになりました。 演劇部に入って、先生から俳優座に入ったらどうかと言われました。 15歳で俳優座に入ることになりました。 兄は医者になって次兄は物理学者になりましたが、私は数学は苦手でした。
私は身体も弱くて恥かしがり屋でした。 自分なら恥かしいけれどほかの人になれば構わないわけです。 「その人間になたっつもりでおやり。」と言っていただいた千田先生のお陰でやってこれたと思います。 俳優座がこの4月で閉館となりました。 劇場を立てるための資金つくりのために皆で映画にも出ました。 勝新太郎さん、萬屋錦之助さん、石原裕次郎さんなどと共演しました。
舞台はやはり生の空気というか、それをお互いが感じると思うんです。 アンサンブルが大切だと千田先生はいつもおっしゃっていました。
「取り敢えずの死」?という中国残留婦人のことを舞台にした話ですが、終了することになり、新たに別の企画を考えました。 朗読会を始めました。 その後舞台にしてやりたいという事になり、 3年前から舞台をやるようになりました。 今年で31年になりました。 集団疎開でお寺の本堂に布団を並べて寝ていて、自分と言うものが無くなってゆくような感じがしました。 「戦争とは」というタイトルにしました。 戦争とはどういうものであるか、どういう人間にしてしまうのか、という事を判てもらいたかった。
辛いことをすればするほど、苦と言うのは終われば楽になる。 仲代さんとかインフルエンザに劇団員が結構罹ってしまって42℃の熱の中でやりましたが、治ってしまいました。 芝居をやっていたら年齢のことを考える暇はないです。