2024年9月12日木曜日

本間生夫(医師・呼吸生理学者)     ・わが人生は、呼吸の研究

 本間生夫(医師・呼吸生理学者)     ・わが人生は、呼吸の研究

本間生夫さんは長く呼吸の研究に取り組んできました。 人間の呼吸は呼吸筋という筋肉で行われ、脳と同様に生きている限り睡眠中も休まずに働き続けます。 一日におよそ2万回、50年で36億回と寿命が延びればとて血もない回数をこなします。 呼吸筋という印肉はどのような筋肉なのか、無意識に行っている呼吸から現在どのような事が判っているのか、「わが人生は、呼吸の研究」、本間生夫さんにお話を伺いました。 

呼吸の研究を始めてから50年以上になります。 当時日本ではあまりいませんでした。 スウェーデンに留学して、帰ってきて日本で研究を続けました。 専門的には呼吸神経生理学と言います。 呼吸の目的は酸素を取り入れるという事になります。 肺は自分で膨らむことが出来ない。 肺を膨らませたり縮めたりするのは胸郭についている筋肉の収縮で、胸郭が広がったり縮んだりします。 それに伴って肺が膨らんだり縮んだりします。 筋肉は20種類ぐらいあり、すべて総称して呼吸筋と呼んでいます。 一日に2万回ぐらい行っています。

高齢者になるとどうしても機能が落ちてきます。  酸素を取り入れて二酸化炭素を出すのが呼吸という事になっていますが、他にも役割があります。  心にはポジティブな感情、ネガティブな感情がありますが、心の中核をなしています。 感情にいろんな動きが伴ってきますが、それを情動と言います。 情動は脳のなかのある部分で作られています。 それの一番重要な中枢が大脳辺縁系?の中の偏桃体?です。 情動の活動は呼吸のリズムで動いています。 呼吸のリズムを作っているのが延髄というところです。 付随的にそれが呼吸筋に行ってリズミカルに収縮しています。 リズムを作り出しているのが、感情を作り出しているところにもあります。 情動を作り出しているところにも呼吸リズムは作り出されている。 だから感情が変化すると呼吸のリズムも変わって来ます。 ですから呼吸が変ると感情も変わって来る。 呼吸は意識して変えられる。  呼吸がゆっくりになるとネガティブな感情が薄らいでくる。  不安が長く続くと不安障害になる。  

不安は20%ぐらいの人が抱えていて、コロナになってさらに増えました。 不安を和らげるのには呼吸を整えるという事が重要です。 1日のうちで何回かは意識して行う事が重要です。 呼吸筋のストレッチ体操を考案しました。 呼吸筋を柔らかくする。 以前公害でぜんそくが流行りました。 その当時に考えました。 息苦しさが和らぎました。 吸っている筋肉をストレッチさせる。 息を吐く時の筋肉をストレッチさせる。 NPO法人安らぎ呼吸プロジェクトのホームページを見れば、いろいろ案内が出てきます。 呼吸指導士も養成しています。 

他に肺機能を高めます。(高齢者は機能が低下しているので)  ストレッチ体操をすると呼吸がゆっくりになります。 呼吸筋の方から脳に情報がフィードバックされます。 その情報が感情の方にも行って、整えてくれる。 不安を和らげてくれる。 東日本大震災の時PTSD(Post Traumatic Stress Disorderとは、命を脅かすような強烈な心的外傷(トラウマ)体験をきっかけに、実際の体験から時間が経過した後になってもフラッシュバックや悪夢による侵入的再体験)になってしまう人もいる。 アメリカでもベトナム戦争でPTSDになっている人が沢山いた。 東北の小学校で呼吸筋のストレッチ体操の指導をしました。 「らったった呼吸体操」という歌も作って行いました。  

呼吸機能が落ちるといろいろな障害も出てくるので、呼吸筋のストレッチ体操は有効です。 呼吸筋、特に肋間筋?は非常に持続性の強い繊維が多いです。 だから疲れずに一生を収縮している。 筋肉のなかに繊維として、白筋?と赤筋?という2種類があります。  白筋?は短時間に強く収縮させる。 赤筋?は強くはないが持続性がある。 赤筋?は酸素を供給して溜まったエネルギーに使う。 一般的には割合は1:1ぐらいですが、肋間筋?は白筋?がほとんどないんです。 高齢者になってもなるべく動くという事が重要です。  歩くことはいい事です。 足の具合が悪い人は呼吸筋のストレッチ体操を何回かやってもらう。 ゆっくりとした深い呼吸がいい呼吸です。 悪い情動はいじめ、虐待にも繋がって来る。 戦争まで起こしてしまう事がある、という風に論文にも書きました。

座禅とか、昔から呼吸が心を落ち着かせることが経験上判っていた。 それが文化に繋がって来る。 日本文化は呼吸から生まれていると、言ったことがあります。 呼吸で心が穏やかになって来る。 これは文化の基本だと思います。 僕は能をやっていますが、能も呼吸です。 お能の曲も作っています。 お能の曲は7、5調なんです。 桶狭間の戦いの前に信長は「敦盛」のお能を舞っているが、不安を取り除くために舞っていたのではないかと思います。  剣道、柔道、合気道、武道、茶道など呼吸と関わっています。 日本の文化は呼吸と密接に関わっています。