2024年5月18日土曜日

磯田道史(歴史学者)          ・歴史は韻をふむ

磯田道史(歴史学者)          ・歴史は韻をふむ 

著作は10冊以上、映画化された「武士の家計簿」は激動の時代を生きぬくヒントを示し人気を博しました。 現在NHKBSとプレミアム4Kで放送中の「英雄たちの選択」に司会として出演中です。 そんな磯田さんは岡山市の出身、今回は子供の頃によく通っていた岡山県倉敷市の楯築遺跡たてつきいせき)や岡山市内の御実家、京都市西京区にある国際日本文化研究センター内の図書館などでお話を伺いました。

楯築遺跡は弥生時代後期に作られたお墓、墳丘墓です。 当時発掘調査を見に来たり大雨の後土器のかけらを捜しに来たりしていました。  磯田さんは小学生の時に古墳を作りました。 やってみないと判らないことがある。 1mの古墳を作るのに面積は2mに伸ばした場合、4倍になり、体積は8倍です。 8倍の感覚を体で知っていないといけないと子供ながらに思ったんです。 

「歴史研究この6年の歩み」を卒業文集に書いています。 歴史好きは2年生ごろ始まり、4年生の頃には城を知るためには歴史を知らなければならないと、図書館で歴史の本を読んだ。 考古学にも興味を持つ。  近くに遺跡の一部が工事で掘り起こされ、土器破片などが出土してよい勉強にもなった。  土器の復元の試みなどもした。 歴史研究に示した探求心は何時までも続けていきたいと思う。 と言った内容。

これは家に伝わってきた古文書です。 池田家に仕えた磯田さんの先祖が残した家系図。(江戸時代に記される。)   歴代の当主が自分の履歴書を書いていて、全部解読すれば日にち単位で何をしていたかが判るので、学校の勉強を一時中断することにしました。(学校には行くが、宿題、学校の勉強はしない。) 歴史の年号を覚えさせたり、成績のためにやらせるから、歴史が面白くなくなる。  有名人ばかりで、皆歴史の主人公だという事を教えないのも良くない。  仁徳天皇陵でもそれを作る人が何千人もいたはずで、そこにはご飯を炊く(弥生炊飯器)人もいただろうし、視点を変えると変わって来る。 

歴史を知らないと世の中安全に暮らせない。 歴史は安全靴だと思っています。 歴史を知っていれば災害を避けられたり、苦難を避けられたり、学んでいればわかる。 類似の予測が出来る。 歴史は繰り返さないが韻を踏む。 歴史を知ってゆくと、類似のことが過去にいくつも同じことが起きている。 南海トラフ巨大地震も100年、150年、200年とか言われれるかもしれないが300年以上来なかったことはない。 来方が韻を踏んで違ってくる。 

研究に力を入れている一つが防災史です。 災害の古文書を読み解き、教訓となる言葉を拾い上げている。 災害は必ず来る。 韻の踏む起き方が、前よりも軽く韻を踏んでくる時と、強めに広く韻を踏んでくる場合がある。 能登は前より強めにですね。 地震の活動期が始まっているのではないかとも考えられる。 

価値観の多様化は必要だと思います。  江戸時代に身分制が崩壊した時に、身分に変わっていい学校に行ったらいい職があるという社会を200年やってきた。 生活が安定したら希望ができて、幸せなんだというようになっているが、そのレールがほとんど崩壊しつつある。  経済成長もそれほど高いものではなくなってきている。  人間が金太郎飴のような人しかできない。 画一した知識はこれまでにはよかったかもしれない、自動車を作ったりするものにはいいかもしれない。  工場型の経済ではなくなった時に、面白いもの、ソフトを作れと言われた時に困っている訳です。 江戸的な多様さ、価値観の多様さが必要。 受験勉強の我慢大会があって、我慢してみても、発想が価値を生む時代になると難しい。  発想を豊かにするためには豊かな体験です。 皆の為にも自分の為にもなる道楽を追求するという事が重要なところです。 

学校に何時に行くこととか、宿題をすることとかは、ルーティーンで決まってやらなければならないことで、なにかいつもと違う事をやってみる時間とものは持っていた方がいい。  その人の時間を豊かにするものは、ルーティーンでない時間を作って下さい。 そこに充実度を求めてゆくしか、この日本で解決策はないと思っています。 探究心をもってやってゆくことの大事さは必要です。