河本美津子(抱っこボランティア) ・子どもたちにぬくもりを
乳児院や児童養護施設の乳児や幼児を抱っこするボランティアです。 活動を始めて間もなく10年になります。 親の虐待や育児放棄、若い母親の生活苦で取り残された子供たちは全国でおよそ4万人いるとされています。 社会的に弱い立場にある幼い子供たちを支援するには、どんなことがありどうしたらいいのでしょうか。
抱っこボランティアを始めたのは乳児院で親と暮らせない子供たちを抱っこしようという事ですが、抱っこボランティアという言葉は使わないんです。 乳児院は2~3歳まで、児童養護施設になると2歳~18歳までいますので、だっこできない子は離れていても目でだっこ、心をだっこという風にしています。 溢れんばかりの愛を持っていこうと思っています。
子供たちが受け入れてくれるかどうか、心配な面がありました。 最初に見たとたんにメロメロでかわいくて何の心配もなかったです。 一般社団法人「ぐるーん」という名前ですが、活動の創設者である、有尾美香子さんがつけた名前で「世界はぐるぐるでできているんだよ」という事ですが、私たちは周りのいろいろなものを巻き込みながら、だんだん大きく広がってゆくような、そういうイメージかなと思っています。 実際活動している方が2300人ぐらいいます。 私が登録した当時は大阪、東京、神奈川で活動していました。 岡山でもできればいいなあと思っていたところに声がかかりました。 2012年のことでした。
有尾美香子さんが若くして亡くなってしまって、2015年に私が代表理事を引き受けることになりました。 以前は外国人、外国人の子供に日本語を教えるボランティアをしていました。 親と離れて暮らす子供たちはどうなのかなあと思いました。 そういった子供は全国でおよそ4万人いるとされています。
パンフレットには「手は与える 癒す力を」、「手は感じる 人のぬくもりを」、「手は伝える 一人でないことを」、「手は作る 人との絆を」と書かれています。 お金も大事でそういうもので手助けする人もいますが、私たちは愛と温かさをという事です。 食事の時間に厭がる子がいて、私は母乳で育てて、泣いたりすると抱っこして母乳を与えたりしていましたが、その子供はそういったことをしてもらえなかったのではないか、親から十分な愛情を受けなかったのではないかと思いました。 知らない人から与えられると、危険と察するのか命がけで抵抗するわけです。 その子の名前を呼んで、一緒にその子がやりたいことをするとか信頼を得るように心がけました。 その子が1歳前後の時でした。 抱っこは比較的に早くはできましたが、心がほぐれるのには時間がかかりました。 抱かれたことのない赤ちゃんは最初に抱くと体が硬いのですが、だんだんと柔らかく成ります。
パンフレットにはナンシーのことも書かれています。 小児病棟に入っているナンシーは3歳ですが、身体も小さくて1歳半ぐらいしかなくて成長もしない検査をしても異常はない。 ナンシーの家族は入院中面会にも
来ない。 ナンシーに声をかけたり、抱っこして微笑みかけたりすることでナンシーは変わっていきました。 私たちのグループ活動にしていきたかったので、この話を聞いて何回泣いたかわかりません。 このエピソードはカトリックシスターの鈴木秀子さんがアメリカに滞在していた時に、或る大学病院の医師の友人から聞いたという話です。 3か月入院で3歳児と同じ体重にぐらいになり、可愛い笑顔が浮かぶようになり、言葉も急速に覚えた。
この仕事をやっていて落ち込んでしまうようなときにはこの本を読んで、大切にしています。 「一声かけて、微笑みをかけて、抱き上げて、あやしてください」と。
私たちは抱っこボランティアのことを「ぐるーん」するといいます。 私たちのメインの活動は子供さんたちと一緒に遊ぶこと、やりたいことを一緒にする、それが「ぐるーん」です。 子供を囲む地域のひとたちも巻き込んでいろんな人たちに、どの子にも関心を持って触ってくれる人がたくさん必要だと思います。 大人も子供も孤立しないように、私たちもいろんな人を巻き込んで、そういう社会になればいいなあと思います。
赤ちゃんを育てることができずにいる母親が特別養子縁組という制度を利用して、赤ちゃんが欲しいご夫婦に養育してもらうという選択肢を選びました。 その話を彼女から聞いて「ありがとう」と言ったら、彼女はびっくりしていました。 批判的なことしか言われてこなかったといっていました。 彼女に宿った命を大切にしてくれてありがとうという意味の言葉でした。
子供は一種の天使のような笑顔がありますね。