2017年12月28日木曜日

望月明義(日本白鳥の会会長)         ・スワンのなみだ

望月明義(日本白鳥の会会長)         ・スワンのなみだ
長野県安曇野市住まい、74歳、傷付いた動物の医療をする動物の病院を開設しています。
近くの川や湖には多くの白鳥が渡ってきます。
その中には人が捨てた釣り道具などに含まれた鉛を飲みこんで死亡するケースも後を立ちません。
望月さんは苦しむ多くの鳥たちのために新しい施術法を工夫して命を救って来ました。
環境汚染で苦しむ動物たちは身を持って人間に警告を発しているとの望月さんのお話を伺いました。

犀川の河原に行ってみると150羽程度、去年は600数十羽、多い時には2000羽を越えていたこともあるが、1がつに向けて増えて来ます。
ここの白鳥は東北から新潟経由なので、新潟に落ち穂が十分にあると、こちらは増えてこない。
シベリアで子供を産んでやってくるわけです。
11月頃から来て3月いっぱいで帰って行来ます。
世界中で6種類あり、日本に来るのはオオハクチョウ、コハクチョウで7万羽が来ます。
コハクチョウが3万5000位です。
くちばしが黄色と黒の模様で見分けるポイントがあります。
トランペッターと言う大きな鳥が時たま迷ってきたりします。
クロエリ白鳥:アルゼンチンにしかいない。
黒白鳥もいます。

平成2年から動物病院をやっています。
その前は長野県の職員で動物と携わってきました。
犀川が流れていて、昭和45年に白鳥の餌付けをして飛来地になっていた。
ダム湖で幼鳥が十字ブロックにあたって、私のところにかつぎ込まれてよくなってきました。
白鳥の病気が直せると言うことになってしまって、長野県の白鳥が全部来るようになりました。
他の動物も来るようになりました。
昭和48年に白鳥の会が出来ています。
白鳥は白く、大きい、美しい、家族のきずなが強い、夫婦は離れないので興味を持っている。
場所をちゃんと覚えて、太陽、地球の磁気、など色々言われているが不思議です。
3000km飛んでくると言われている。
日本には南は鳥取県辺りまで飛んできています。

最近鳥に無線機を取り付けて、人工衛星で追跡してフライウエイ、繁殖地までのコースがよく判るようになってきました。
コハクチョウはシベリアの北の方からやって来る、オオハクチョウはそのちょっと手前です。
オオハクチョウは北海道から東北地方に越冬して、コハクチョウは鳥取あたりまで来ます。
ロシアの極東で繁殖するときにも一つのつがいで1平方kmのテリトリーを築きます。
こちらのように集団でいるわけではないです。
羽の上と羽の下では空気の流れが違っていて、羽の後に渦が生じて上昇気流を作るので、次の白鳥はその位置に行くと楽に飛べる。
それが次々になりV字型の群れをつくって飛び、先頭は交代すると言われている。
白鳥は90羽ほど治療しています。
最初は鉛中毒が白鳥の主体を占めていました。
それが段々下火になってきた、法律、モラルの問題、釣りおもりを鉛から鉄に変えるなどの対策で効果が出てきたが、無くなった訳ではない。
鉛中毒は体力がなくなるので群れから離れる、胃腸が壊死するので焼ける感じがして水を多く飲み、青い下痢便をして歩けなくなり必ず死にます。

二羽の鉛中毒の白鳥が平成5年に運ばれてきました。(レントゲンで鉛の玉が写っていた)
北海道の情報を手に入れて、鉛解毒剤を朝晩注射しましたが死んでしまいました。
その頃は不忍池でカモに矢が刺さっていたとか山形県でも同様なことがありました。
白鳥はくちばしで水草などを食べて食道を通って腺胃があり、PH2.5ぐらいの強烈な胃酸を出して次に筋胃(砂肝)に来ます。
白鳥は無理に筋胃(砂肝)の中に小石を飲み込み、胃酸にまみれた食べ物を凄い力で揉んで消化して小腸などがありうんちになってでる訳です。
川の底に釣りおもりなどがあると、恰好な小石と思って飲みこんで、撹拌すると鉛は酸に融け込み吸収されて肝臓、胃、じん臓、神経がやられたりして鉛中毒になり亡くなってしまう。
鉛解毒剤では上手くいかなかった。
鉛そのものを取り出せばいいと思ったが、砂肝の筋肉が厚くて手術出来ないと言うことが常識だった。
マガモのメスが鉛中毒で近所の人が持ってきて、腺胃と筋胃の中間辺りを切って鉛を取り出すことに成功しました。
3日後には元気になり、米をパクパク食べましたが、4日目には亡くなってしまいました。
解剖したら、手術したところが不適当で(癒着しにくいところだった)、急に硬い米粒を食べさせてしまった事がよくなかった。

胃の下を切るといいと言うことをマガモから知りました。
亜成鳥(幼鳥の次)はまだ頭が黒いが、それが運び込まれて、手術をすることになり、レントゲン下で取り出しました。
3日目には元気になり物を食べるようになり、12日後には放鳥することになり、日本とロシアを行ったり来たりするように「環」と言う名を付けて、最初はうまく飛べなかったが1カ月後には飛ぶことが出来て帰って行きました。
諏訪湖にも同様なことが起きており、当方に4羽来ました。
もう体温が冷たくなっていて処置したが亡くなってしまいました。
次に1週間後また幼鳥がきましたが、体温が38℃ある。(正常の場合は40℃位ある)
手術をして、鉛を取り出して12日後には元気になり諏訪湖に返しました。
「マアちゃん」と言う名を付けました。
その時には家族が迎えに来ました。
母親は何処へ行っていたんだと言うばかりに離れてしまったが、父親がその後1週間一緒にいて面倒を見てその1週間後位には母親も機嫌を取り直して一緒になりました。

野生動物救護獣医師協会が有り、鉛中毒に関係した人が集まり、現状、今後に対するシンポジュウムがあり、状況と手術の方法を発表しました。
法律の規制、モラルの問題、子供たちへの教育などを話して帰ってきました。
11月に観に行ったら足輪を付けた白鳥がいると言うことで子供から連絡を受けました。
まさしく「マアちゃん」で嬉しくてカメラを向けました。
「ミサちゃん」夫婦も来て、その夫婦に子供を連れて来てくれました。
餌付けの問題もあります、鳥インフルエンザが有った以降餌付けは控えるようになっています。
環境キャパシティーに応じてくることが自然のことだと思います。
鉛汚染についてはいけないことなので、人間にも他の生物にも影響することなので法律、モラルにうったえて行動にうつさないといけないと思う。