山口健(静岡県立静岡ガンセンター総長) 癌患者の立場に立って
2002年に開設されました 山口さんは東京の癌センターで28年間、治療と研究に携わり、治らない患者には、一体どうしたら、良いのかを考え続けてきました
静岡ガンセンター開院に際しては、治すだけの医療から、患者と家族にとって最も望ましい医療を目指して、よろず相談を始めました
相談は治療だけに限らず、医療費や仕事の相談まで、どんな悩みにも応じています、
電話や直接面談で相談を聞き、よくある質問はインターネットで閲覧できるようになってます
計画は1996年ごろから決まっていますので、当時国立がんセンターに勤務していましたので、それからのお付き合いです
病院でのよろず相談 21世紀に初めて出来るようなガンセンターだと思っています
どういう病院にしようかと、数年考えたところ、患者の視点を重視することを起点にするという、患者さんの立場に立って、凡てを運用していこうというのがポリシーとする
そうすると今までの病院と違って、患者さんにとって何が大切かを考えたときに、患者さんが自分自身でいろんなことを、しっかり決定していただくことも必要なんじゃないかと考えました
それまでは上から目線的に医療関係者が指示的にやっていたのが多かった
患者さんの疑問な点、不安な点をしっかり打ち明けていただいて、それをアドバイスしながら、心通う対話、そういう場が実現できないかなあと、考えたときに、よろず相談と言うのが一つのやり方かなあと考えた
今までに医療だと、患者さんがなかなか疑問な点を医者に聞きにくいところがある
出来るだけ敷居の低いものを作る 医療処置とは、別部隊 振り分ける
セカンドオピニオンはあくまで、治療方針の第二の意見で、患者さん、ご家族が困られるのはそういう治療を受けると決まった時に、本当にこの病院でいいのか、この医者でいいのかとか、痛みとかが、どれぐらいあるのかとか、非常に不安で困っているのだけれどどうしたらいいのだろうかと、癌の治療ともなるとさまざまな不安、悩みが襲ってくる
本当に治療奉仕以外のところで患者さんの悩みや様々なご負担に対してよろず相談を設けた
患者さんの反応は? 日本でも初めてだったので、お客さんが来なかったらどうしようかと心配だったので、最初は2人だった
沢山来て、あっと言う間に2人では対応できなくなって、2、3年に間に7,8人に人を増やしました
ニーズは高い 本当に心底困っていれば訴えることはあるが、そこまでいかなくても、何となく不安の時に今までの病院には訴えることはあまり無かった
解決できなくても言葉を出して誰かに伝えると、随分気持ちは晴れるもの
そう簡単には解決できない
口に出して、話を聞いてもらって、難しいですが、でも一緒に考えてみましょうかと 「一緒」という言葉が重要なキーワードです 随分心が晴れたという
病気が非常に厳しい状況で患者さんとご家族がよろず相談にお見えになった
担当者も病気を治すこともできないし、これ以上の治療法は無い
結局何の解決策は出ないんですけれども、その患者さんのご家族は涙を流して、嬉し涙だと言うんですよ
病気そのものは治せないけれども、話を聞いてもらって、心がすっきりしたと、覚悟もできたと、対話がこんなに心を慰めてくれるものだとは思わなかったと、いうような出来事があった
医師は或る意味、クールです、癌告知、状況告知をしなければならない
命を救う事は出来ないと、或るときには、患者さんに言わねばならない
家族は納得ができない場合があり、ソーシャルワーカーや臨床心理師を置いているので、その方々がしっかり受け止めて、困難であるが、こういう考え方もあるといろいろお話してゆく
(傾聴カウンセリング的) 一緒に考えてゆく過程で自分自身の心に思うところが出てくる
他人に話すことで自分の心の整理がつくんです それがよろず相談の一つの役割だと思う
良い回答を得られることは少ない場合が多いと思うが、だけど話すことで自分の心の整理がつきましたと言われる場合が多い
心に悩みを抱えていられる方は一人で考え込まずに、どなたでもいいですから、周りの方にその心の思いのたけを話をされて、それは結局自分の心の整理につながっているんじゃないかなと良く経験します
医師の責任は、癌の場合は6割の方が完治、治癒しますが、4割の方が治せない
治せない方にも出来るだけ長くお元気で、日常生活をしていただけるように、延命と言うと言葉がきついですが、元気で過ごしていた頂ける時間を、できるだけ日常生活を元気で長く生きられるように提示して、と言う事が医師の役割です
そうはいっても完全に治せないのかというのは心の負担になるので、それを様々な形で引き受ける、カウンセリングを含めて と言うのが癌センターではやっています
解決策がないと、相談に乗っている方の負担になるのでは? 相談担当の心の負担は大きい
実際には多くの相談される方が、それはわかっているんだけれども、何とかしたいという気持ちと、話を聞いてもらいたいと、後者の場合はお話をすることで、或る程度はご満足いただいているのではないかと思う
相談の内容は? セカンドオピニオン的な 医学的な事 治療はこれでいいのだろうかと言う事
副作用強くでているが何かいい方法はないかとか、生活上のつらさを和らげる方法は無いか、暮らしの問題で、医療費がかかっているのだけれど、何かいい手立てなないかとかいろいろある
20世紀は暮らしの問題には手を出さなかったが、静岡ガンセンターにきてからは、やれるだけやろうと、そういう気持ちでよろず相談を作ったわけですから
患者さん、の悩み負担をどう和らげるか そこまでやらないと真の意味での患者、家族の支援にはならないが、スタッフとしては経験のないことだったので、そこを10年かけてすこしずつ、積み重ねてきた
ここで考えてきたことが、全国に広まってきた よろず相談と言う機能そのものも、癌の拠点病院が400あるが、そのすべてにこれと同じものを作ることが法律、又政府の計画で決まった
全国の拠点で相談に乗っていただけるようになってきている
心のケアもここで経験したことを、項目整理して、静岡分類を作った 1万件以上(1万種類)の事をリスト化して皆さんに使っていただいている(400の拠点病院に情報提供している)
就労の問題 癌になって仕事をやめなければいけなくなったという人が3割 解雇されることは少なくて自分自身で辞めることに決めたとかが、結構いらっしゃる
お金の事が問題になる 収入が途絶える 再就職を何とかしなければいけないと、そういう相談も頂いていたので、このよろず相談が中心になって、地域の企業に紹介をすることも2.3年前から始めて、どういう形でハローワークと連携するかとか、そうい言う事が始まっている
企業はなかなか難しい 非常に脳力が高い人が沢山いますので、是非努めてくださいという方が何名かはいらっしゃいます
雇用する側からするとなかなか雇いにくいと思う
ただ今は日本人2人に1人になるので癌が完全に治れば、元通りに働けるし、完全に治らなくても何年か働けますし、働くことが生きがいでもあるので、患者さんの心の問題としては重要な問題だと思って一生懸命にやっている
1年間に12000件が直接お越しになって相談される
後の5,6000件が電話で受けている
静岡県民の方としているが、日本の他のところからもある
数年前からほぼ12000件 になっている
共通した悩みはある(文章にすれば同じでも、けっして同じになることは無い)
本来は癌を治療する人間 国立癌センターに勤務していたので、何とか治したいと、研究者指向だったと思うが、一人ひとりが悩みを抱えながら、治療している
そうすると研究も大事だが、患者さん一人ひとりの悩みや負担をすこしでも和らげる方法は無いかと、年をとって考えが変わって、このプロジェクトにはいったもので、研究指向型で無く、患者指向型の病院を作るとどうなるかが、静岡ガンセンターの原点だった
その中の重要なパートがよろず相談だった
患者さんの背景になるものをもう少し手掛けないと、本当の意味で治していることにはならない
全人的医療、 病変を治すのでなく、患者さんとう人間を治す、治せない場合は苦痛を和らげる
苦痛の中には身体の苦痛も勿論あるが、心の苦痛もあるので、」両方にケアをするこれが21世紀の医療かなあとしたので、こういうものをできるだけ、取り込んで来た
治せなかった場合 4割は治せない 心の問題まで踏み込んでおかないと、その患者さんが悔いを残してしまう 一番大事なのは万が一完全に治せなかった場合は、命を落とすのは残念だけど悔いは無いよ、ありがとうと最後に言っていただけるかどうか、が勝負だと思っている
悔いがないという言葉を言っていただくと言う事は、やはり出来るだけの事をやらせていただけなければいけないと思っている
患者さんとしては、困ったことは一番理解する 相談すれば一回吹っ切れて休めますね
心をもらう様な場所がよろず相談であるといえます
暮らしが厳しいと担当医に訴えても、医者も困るが、ほっておいていいかと言うと、そうもいかない
行政が、こういう支援をしてますよとお伝えする部門があるべきだと思います
病院にもよくそういうところがあるが、敷居が高い
医者に聞くことでもないが、誰かに聞きたいが、窓口があまりはっきりしない その一つがよろず相談
医師、看護師に対する苦情 それも受け入れなければいけない 相談の1割がそういう相談
(対応としては指導あるいは担当医を変えるとかをやっている)
病院である以上、病気を治すのが1にも2にもそうなんですが、
、がないかもしれないが悩みをしっかり聞いてやる、あるいは出来れば解決して上げる
ここを今一生懸命にくっつけてやろうと思っている
脳梗塞、脳卒中は発作を起こして、3時間以内に治療をしないと良い結果が得られないことが多い 患者さんの訴えを聞いているよりも治療を先行しないといけない
癌は患者さんが考える時間がある 癌は或意味慢性の病気 時間があるので余計に悩みが出てくるし、深くなってしまう それの対処がいわばよろず相談になる
癌の相談は癌と言う病気に関連した相談が多い
認知証、精神的な疾患 気楽に相談できる部門はこれからの医療には必要だと思う
一番大事なことは全国の癌の患者さんを診療している医療機関が相談部門が必要だと気付いた事だと思う(あっと言う間、400箇所出来たというのは、医療関係者がみんな必要だと思っていたからなのでは)
相談に乗る人のレベルを高めることが必要 講習会をやっているが、より実践的な相談をやっていて喜ばれている)
病気そのものの悩みは別にあるので、この部分を別な相談部門を考えている(患者さん)
患者さん、ご家族の方が、困った時に電話一本、あるいは直接お話しをしていただく
それが対話となって、つらさを少しでも和らげる、心の整理につながる
癌は高齢化と共に一般的には起きてくる 人間として生きている以上動脈硬化、癌は絶対に避けられない
働き盛りの癌を治すような時代は必ず来ると思うが、人間が癌から完全に命を落とすことが無くなる事は無いと思う
癌を治すことと、平行に治せない方にケアをしっかりやっていくことは今後50年100年は必要だと思っている