西本昌司(岩石・鉱物担当/愛知大学教授) ・子ども科学電話相談40周年 ~好奇心、岩を穿つ~
地質学、岩石学は石や地層から謎を解き明かす、これが地質学です。 謎というのは地球の歴史です。 地下でどんなことが起こっているのか、地球規模で起こっているようなことを石から読み解くという学問でまさに歴史科学と言った感じです。 過去にどんなことが起こっていたかという事は石しかないんです。 この前愛知県の鳳来寺山という山があってあそこにある石は火山の石なんです。 でもい愛知県には火山がないですね。 大昔(1500万年ぐらい前)火山があったという事です。 今噴火している火山の地下で何が起こっているかという事は見れませんが、昔の火山の跡にいけば、昔の雨、風、川が山を削って地下の状態を出してくれているわけです。(地下がむき出しになっている。) 昔にあった火山の地下にもぐっているのと同じです。 石が判って来ると、タイムマシーン乗って昔の地球板碑が出来るんです。 石を通して時空を越えてゆくと言う様な楽しい学問です。鉱物の集合体が岩石です。 鉱物は何が集まっているかというと原子が集まっています。 原子が判って来ると世界が広がります。
町の中の石にも注目しています。 注目したきっかけは二つあります。 ①考古学、歴史研究者とコラボしたこと。 古墳、石器、城の石垣などでの重要な石については考古学者などは石のことは判らない。 石のことを頼まれました。 私は歴史のことは判らないので一緒にやって行くうちに面白くなりました。 石から人の歴史もわかるんだという事に気づかされました。 ②街中にある石材を調べ始めたら、世界中からいろいろな石が集まっていて、はまってしまいました。 何十億年前の石は日本にはないが、石材としていっぱいあります。(海外に行く必要がなく磨いてあるので観察の準備が出来ている。)
建築のデザインとしての歴史みたいなものが背後にあって、建築設計者のデザインでありアイディアでもあります。 石材は飾りで構造的には不要なものです。 時代的な流行があるわけです。 例えばバブル期に使われた石材と最近とでは全然違います。 バブル期には赤い石材が流行っていたり、時代背景を感じさせるものがあります。 バブル期には高級な大理石がトイレに使われたりしています。(今は絶対ない。) 経済状況が如実に表れます。
アンモナイトが石材に見られたりします。 アンモナイトの渦巻き模様が現れるようにするのにはかなり難しいと思います。 斜めに切ったりしたりすると決して渦巻きは出てこない。 何でなのか考えてゆくと、アンモナイトは同じ方向に並んでいたのではないかと思います。 アンモナイトは沈むと水平に倒れて渦巻き方向を横にするように沈むと思います。 という事はあれはおそらく海底に沈んでいたものです。
子供の頃は自然界で蝉を取ったり蝶を取ったりして遊んで昆虫標本を作っていました。 出身は広島県の三原で海、山が近くにありました。 化石よりも岩石が好きで集めていました。 鹿児島県の海岸で遊んでいたら水に浮く石を見つけて吃驚しましたが、軽石だという事を教わりました。 大学は地質学の方に進みました。 同じような興味を持ている人が沢山いました。 昨年末二人の小学生がスタジオに来てくれました。 石について一緒に盛り上がりました。
卒業後科学館に入りました。 収蔵庫が無くて展覧会を開く時にはほかの館から借りてこないといけない。 その結果全国の博物館に友達が出来ました。 集客をするには恐竜展が一番で、恐竜のことも勉強するようになり、自分の世界を広げることにもなりました。 学芸員として指導していたお子さんが世界的な恐竜学者になって、学芸員冥利に尽きます。 出来るだけ現場に行って、自然に目を向けてもらうような教室をやっています。 大人にも共感してもらえる人がいっぱいいることを知ってもらいたいと思います。(大事な事です。) 「好き」を追求すれば知識も増えるし、エンジョイできると思います。 人と違う発見が出来る人は観察眼が凄いというか、発想力が凄いと思います。
地球は石の惑星です。 地球の石のことが判ると、他の惑星のこと宇宙の歴史のことも判ります。 石材の生まれた場所(採掘場)を観に行きたくなります。 町に出回っている石材は採掘地でとられる極く一部で、我々は不人気なところを見たい。 学術的に面白いのは別の石との境目とかで、それは何かの事件の跡なんです。 例えば一方はマグマの固まった石、一方は海の底で出来上がった石だとするとどうあって出会うのか。 海の底に固まった石が地下に埋もれて、そこにマグマがやってくるという事件の跡です。 境目を見るのが面白いです。