2022年2月10日木曜日

塩見三省(俳優)            ・中断された人生だが・・・・

 塩見三省(俳優)            ・中断された人生だが・・・・

NHK朝ドラの「あまちゃん」の琥珀の勉さんで話題になりましたが、その1年後の2014年に脳出血で倒れました。  一命はとりとめましたが、左半身に麻痺が残りました。  懸命なリハビリで2016年にNHKのドラマで復帰して杖を突いて歩く姿で登場しました。  その後映画アウトレイジ 最終章』やNHKのドラマなどに出演しています。  2021年には病気のことやリハビリのことなどをまとめた初めてのエッセー『歌うように伝えたい』を出版しました。  

「あまちゃん」の琥珀の勉さん役は今でも心の中に残っています。  2014年に66歳の時に脳出血で倒れました。  前の年は「あまちゃん」以外でもオファーが多くあって自分としてはフル回転でやって、その冬は寒かったんですね。   すべての作品が終わって1か月ぐらい休みがあって気を抜いている時に発症してしまいました。  一瞬にして身体の具合が悪くなってしまいました。  5か月入院して、もう8年になります。   自分がガラッと変わったぐらいの8年でした。   この8年は塩見三省にとって必然だったと今は思っています。   自分の身体がもう元には戻らないんだという事を自分が知った時からは苦しいですよね。   元には戻らないんだという事を自分の中に落とし込むのに時間がかかりました。   足の不具合が残ったけれど、自分が新しい身体に生まれ変わったんだと、そういう感覚に自分を持って行こうとするのに時間がかかったが、この身体で人前に出てゆくという気持ちになったのが、4年ぐらい経った頃ですかね。  悔しさ、情けなさとかいろんなものが自分のなかで消化は出来ていないが、カメラの前に立ったり、本を書いたりして一つ一つクリアしてきました。  

長嶋茂雄さんとは同じ病気で苦しんでいる同志として接してくださいました。  僕に言ってくれる一言一言がズキッときました。  長嶋さんと週一回あっていると、自分が解き放たれてゆくような感じがあって、映画でもテレビでもこんな身体で出て行けたのは、明るい世界を見せてくださったことは僕にとっては大きい事でした。  2015年12月15日カメラの前に立って復帰しました。  NHKの恋の三陸  列車コンで行こう!』でした。  2016年、東日本大震災5周年にあたり復興へのドラマでした。  倒れてもいいと思って100mをフルスピードで歩きました。  今でもあの時のスピードでは歩けません。   みんなに助けられた作品でした。

エッセー『歌うように伝えたい』 2021年6月に出版。   この病気、この身体は一体何なんだという事を本を読んで学んで勇気づけられたことがあり、自分の闘病のこととかいろんな大切なことを書くことによって、けじめがつけられると言われて、出版することになりました。  ありのままを書くという事を核にして書き終えました。   人生は中断したけれど、昨日から今日、今日から明日って時は流れて人生は続いて行くんですね。    時間をかけて新しい明日に向かって歩いてゆくという事をやっていかないと、いけないのかなと思います。  

三省は「論語」にある孔子の弟子が「吾日に 吾が身を三省する」という言葉から祖父が取って名前を付けてくれました。   1978年演劇集団 円に入団しました。  岸田今日子さんとかに芝居の周辺に大切なもの、絵、映画、本があるんだという事を教えていただいて、この人たちについて行けば面白いことがあるのではないかと思ってくっついていきました。  つかこうへいさんとも知り合いました。   1989年「熱海殺人事件 塩見三省スペシャル」 これをやれば壁を乗り越えられるのではないかと思いました。  北野武監督作「アウトレイジ ビヨンド」「アウトレイジ 最終章」に出演。   第22回東京スポーツ映画大賞 男優賞(『アウトレイジ ビヨンド』) 第39回ヨコハマ映画祭 助演男優賞(『アウトレイジ 最終章』)  あの映画は自分というもの生き様、実際に生きて行きたいというのと、しかし苦しいというベクトルが混じり合ったところでやっていますから、僕にとっては素晴らしい映画でした。   2020年NHKの「天使にリクエストを〜人生最後の願い〜」 2021年「ハルカの光」  ホームレスになっても小説を書き続けてゆく、それはみじめでもなんでもなくて、小説を書く夢を追いかけた人間だという、自分のなかで確保してやれれば、出来ますという事でした。  「ハルカの光」は大学教授と若い男性との恋愛もの。  東日本大震災の復興10年目の作品、

74歳、倒れてから8年、僕の人生の贈り物だとしたら、残された人生で、たとえどんな悪いカードが配られたとしても投げ捨てないで、残された人生を自分のこの身体を活かしきって、生ききって、俳優という事を含めて、ものを書くという事も含めて、自分の可能性を広げて行って、一生懸命精一杯生ききってゆくという事が、自分の目標、毎日毎日を実感をもって生きてゆく、という事に尽きると思います。