2021年5月1日土曜日

山下純一(ハーモニカ奏者)       ・ハーモニカに魂込めて

 山下純一(ハーモニカ奏者)       ・ハーモニカに魂込めて

山下さんは京都生まれの46歳。   原因不明の難病のため視覚と両手足に障害があって車椅子を使っています。   ハーモニカに出会ったのは20歳のころ、独学で奏法を学びますが、病のため変形した手ではハーモニカを上手く手で持てませんでした。  長い試行錯誤の末、曲がった左手で ハーモニカとマイクを巻き込むように持ってそれを右手のほうで下から支えるという独自の奏法にたどり着きます。  2018年初めて参加した国内最大のハーモニカコンテストで優勝、その実力が高く評価されました。  ハーモニカに込めた思いを伺いました。

*「新天地」  山下純一 オリジナル曲

この曲で優勝しました。   ドイツのハーモニカメーカーが主催する日本最大規模のコンテストで、もう40年ぐらいやっているコンテストです。  その38回目に僕が優勝させていただきました。   テンホールズハーモニカは10個の穴が開いている小型のハーモニカになります。  12cmの小型のものです。   学校で習うようなハーモニカは上下に穴が開ているようなタイプでそれとはちょっと違います。  一段のシングルリードと言われているものです。  このコンテストに参加するのは初めてでした。  障害者、健常者関係なく音楽は飛び越えてゆくということで改めて感じました。   出番も最初でした、あまり有利ではないと思いました。  参加者は10数人いたと思います。

今は全く視力はありません。  視力がゼロになったのは20歳のころでした。  手足も関節が変形していて、握力も2kgぐらいです。 ペットボトルも開けられず、歯であけます。普段の生活はヘルパーさんにも来ていただいてますし、いろんなことをするときにはバンドメンバーなどに助けてもらったりしています。   

最初は障害があることを両親は気付いていませんでした。  しゃべるのは誰よりも早かったし、歩くことも早かったようです。  様子がおかしくなったのは2歳半ぐらいと聞いています。   手を触ると痛がってなんでだろうといっていましたが、それは腫れていたようです。   病院に行ってみてもらうと、そのときには若年性関節リュウマチというふうに診断されましたが。  今でもはっきりとした原因はわかっていません。  体の痛みを抑えたりする強い薬は今飲んでいます。  薬を飲み忘れたりするとすごく痛みを感じます。  体中の関節が曲がって可動域が狭くて、肩などは亜脱臼、手、指などは脱臼状態です。

ハーモニカは持ち方が大事で音が左右されてしまいます。  持ち方で音を微妙に調節したりします。  皆さんと同じ持ち方はどうしてもできません。  教則ビデオを見ることはできないが聞いて、その音の真似をするということで進んできました。    持ち方には納得できなかったが、或る時に寝っ転がってハーモニカを 口もとにもっていったときにピタッとうまく押さえられて、僕が思ったような音が出たんです。  でも座ったらできなかった。  座ってもできるように練習を重ねてゆきました。  関節をもっと曲げていったら何とかできるようになりました。  

音楽は実はドラムから入りました。   それまで弱視だったが、20歳ごろに右肩があがらなくなり、体の使い方が変わってしまってドラムができなくなってきました。  音楽は捨てきれずできる楽器を探していたら、テンホールズハーモニカだったんです。  

病気が悪化してゆくことに対しては受け止めざるを得ませんでした。   ずーっと障害者としてきたので、健常者のことを知りたかったので卒論のタイトルは「健常者研究」でしたから。 その間体調が悪くなり2年間休学しましたが、わざとマイナス思考に変えてみました。  できないことを挙げていったら、押さえ込んでいたんだと、自分でやりたかった欲求が見えてきて、音楽はやろうとしているなかで一番可能性がありました。  音楽を死に物狂いでやろうと決心しました。    この音がやっと出たと思うまでには、20年はかかっています。   

テンホールズハーモニカは原始的な音だと思います。  自分の口の中でない音をひねり出したりします。 このハーモニカは普通に吹いていると半音はでません。  一つの穴で吹いたり吸ったりいいろいろ音をひねり出していきます。  タクシー待ちでハーモニカを吹いていたら、それを聞いていた或る人から紹介してもらっていろいろ先生に会えて、教則の先生にも会えました。  ハーモニカでセッションしてもらった時には壁がバーンと取れた気がしました。  アイコンタクトをしたような感覚がありました。 音楽の力です。

コロナ渦の影響はもろに受けました。   全盲で車椅子だとできないことが多いです。 膝にパッドをつけて白杖をついて階段は膝歩きしています。  

学校公演をさせてもらっています。  演奏と失敗談とかお話をしています。  子供たちの柔らかい発想は未来の希望です。   あなたたちの発想が世界を変えるよと言ってきました。

今年行われるドイツの世界大会に出場して頑張りたいと思っています。  11月ですが、コロナの関係で開催されるかどうかわかりません。  いいライブ、作り手としていい表現の作品を残していきたいと思っています。

*「まだやれる」   ハーモニカ奏者・山下純一